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逢魔が時/Time of Change to Night マナコスト (2)(B)(B) タイプ エンチャント レアリティ アンコモン すべての黒のクリーチャーは攻撃に参加するたび、ターン終了時まで+1/+0の修整を受けるとともに畏怖を得る。 ビート力増強エンチャント。 参考 カードセット一覧/東方永夜抄 アンコモン エンチャント 一時的プラス修整 東方永夜抄 黒 4マナ
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【TOP】【←prev】【PlayStation】【next→】 逢魔が時 プレミアムFANディスク タイトル 逢魔が時 プレミアム"FAN"ディスク 機種 プレイステーション 型番 SLPM-80623 ジャンル ファンディスク 発売元 ビクターインタラクティブソフトウエア 発売日 価格 非売品 逢魔が時 関連 PS 逢魔が時 逢魔が時 2 逢魔が時 プレミアムFANディスク 駿河屋で購入 プレイステーション
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待ちわびた逢魔が時 収録作品:東方虹龍洞 ~ Unconnected Marketeers. シーン:5面道中のテーマ データ BPM 165 拍子 【00 00】5/4拍子【00 58】4/4拍子【01 21】5/4拍子【01 50】4/4拍子 再生時間 02 50 調性 使用楽器 コード進行 ZUN氏コメント 5面のテーマです。 幻想的な山からの展望のイメージから、天狗が出て世界が急に身近になり、世界が狭くなると心が軽くなる……そんな感じの曲です。 4面の虹龍洞が息苦しい感じだったのに対し、軽快で楽しい、そしてボスがわかりやすい奴、というのが気持ちいいです。 (出典:東方虹龍洞 Music Room より) 解説 コメント この曲の話題なら何でもOK! 名前 コメント すべてのコメントを見る
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▼● In the Blood 傀儡師アフマウの正体が判った……。 だが、宰相の内命により とりあえず、ナジャ社長に 任務完了の報告をせねばならない。 カダーバの浮沼 Ovjang オイ、ていとくトヤラ! Luzaf …………。 Ovjang コノふねハ いま、ドコヘむカッテイル? Luzaf ドゥブッカ島だ。 Ovjang ホーゥ♪ Mnejing ……分かったぞ。 ……ペリキアだな……? Ovjang ずぼしダナ! Mnejing ……どんなところなのだ? Aphmau ……聞いたことあるわ。 Aphmau 昔、この近海で 商船を襲ってた恐ろしい海賊…… イフラマドのコルセアの根城だったって。 Ovjang ヒエエ…… つみモナイしょうせんヲ、ねらッテタノカ? Luzaf ……アトルガンのな。 Aphmau ……だから、ある日 嵐が起こって、イフラマドのコルセアは みんな海の底に沈んじゃったって。 Luzaf ……みなが…… 海に沈んだのでは……ない……。 Aphmau …………? Mnejing ……では、 イフラマドのコルセアがいない今…… ペリキアはどうなっておる? Ovjang マサカ、 めいかいノ、ものドモノそうくつ……。 Aphmau ……亡霊コルセアの……? Luzaf ふっ…… だったら、どうする? Aphmau ……そ、それは…… Ovjang たのシミダゾ! Aphmau そうね、楽しみよ!! Luzaf なぜだ? 命を奪われるかもしれんぞ? Aphmau だって、だって…… 亡霊になったとはいえ、元は海賊さん。 家族やお友だちがいる人間だったわけでしょう? Aphmau だから…… 寂しくて、悲しくて、会いたくて……。 Aphmau 長いあいだ、ずーっと 苦しんできたんじゃないかな……。 Aphmau だから、反省して もう悪いことなんてしないと思うの。 Aphmau それに…… Ovjang ソウソウ…… Aphmau この船の人たち、 とっても優しくしてくれたもの! Ovjang ……さいしょハ、 おそロシカッタケド、ナー。 Mnejing ……だが、 兜の金具が軋んでいたら…… 油まで注してくれた……。 Luzaf あいつらが そんなことを……。 Luzaf !? Luzaf …………。 Aphmau 提督? どうしたの? Luzaf 黙れ! Luzaf ……この音は、 間違いない……この音はッ! Mnejing ……そういえば、 首をしめられたアプカルみたいな 鳴き声がするな……。 Luzaf 忘れるものか……。 いや、忘れることなど……できない……。 Luzaf あの日の、涙…… 血……骨……すべて……。 Ovjang ち? Mnejing ……骨? Luzaf 間違いない、 ……ラミアだ。 Luzaf あの音は、皇国軍が ラミアを操るために用いる笛の音色だ。 Mnejing ……何を言うか。 ラミアは、皇国の敵ぞ……? Luzaf ぬかせ。 Luzaf 200年前、 俺たちコルセアの隠れ家を一掃しようと 皇国軍がペリキアに送りこんだ兵器…… Luzaf それが、合成獣ラミアだ。 Aphmau そんなの嘘!! だって、皇都にまで あいつらは攻めよせてきてるのよ!? Luzaf ふっ……。 飼い犬に手を噛まれたってわけか。 Luzaf どんな汚い手をも使う 皇国らしい失策だな……。 Aphmau ……皇国軍は、 ……アトルガンは、無敵だもの! Aphmau ラミアなんて必要ない! そんなこと聖皇は命じないわ! Luzaf ……いいだろう。 見せてやる。ついてこい! Ovjang ……あふまうヨ。 どうするのだ? きっと、うそダゾ? Aphmau そうかもしれない。 ううん、きっとそう……でも……。 Mnejing ……こんなとき、 ……丞相なら、きっとこう言うだろうな。 Mnejing ……己の目で確かめろ、と。 ………………………………………………………………………………………… Razfahd ……まだ、見つからんのか? Whafael ははっ。 八方手をつくしてはいるのですが、 何分にも、迷路のような場所でして……。 Razfahd 言い訳は聞きたくない。 Razfahd お前たちが ラミアの嗅覚ならば、というから 諸将の反対を押し切り、禁を破ったのだ。 Razfahd 陛下を無事に保護するまで、 帰れんと思え。 Amkeen 御安心ください。 このラミアは、我らが錬金術の粋を集めて 改良を加えたもの…… Amkeen 必ずや御期待に応えましょう。 Razfahd だと、いいがな。 Razfahd 驚かせてしまったようだな。 [Your Name]。 Razfahd とんだ失態を見せてしまった。 Razfahd まさか、お前が ここまで足を伸ばしていようとは、 思わなかったのでな。 ………………………………………………………………………………………… Luzaf ! やはり、か……。 Ovjang あれハ? あれハ? アノ、あかイよろいノひと……。 Mnejing ……はて、 丞相に似ておるが……。 Aphmau まさか! ……見間違いよ……きっと……。 Luzaf どうした? ラミアと馴れ合う自国の者に ショックでも受けたか? Luzaf それとも、 あの赤い鎧の男……見知っているのか? Aphmau ……ええ。 Luzaf だろうな。 何しろ、あいつは皇国の…… Aphmau ……兄……です。 Luzaf ……なに? Aphmau マウの兄さま……です……。 ………………………………………………………………………………………… Razfahd ラミアは、 なんと言っている? Amkeen それが…… 確かに、この辺りにいると……。 Razfahd ならば、 もう一度、しらみ潰しに捜せ! Amkeen 御意……。 ………………………………………………………………………………………… Aphmau ウソよ……。 Aphmau ! ……マウの傭兵がいる……。 Aphmau ……そうだわ! きっと、なにか事情が…… Aphmau ……そう、 きっと複雑な……事情があるのよ。 聞けばわかるわ! Aphmau 兄さま!!! Luzaf ……。 Luzaf ……仕方ないな。 Luzaf ……連れてってやるか。 Razfahd ! Razfahd ……お前……。 Aphmau 兄さま、 ここで……何してるの? Razfahd さらわれたと聞いた…… ……無事なのか? Aphmau ……見ての通りよ。 Razfahd 貴様か? アフマウをかどわかして…… Aphmau 違うわ! Aphmau マウが勝手に 彼についてったの! Razfahd なに? どういうつもりだ!? Razfahd 見ず知らずの男に ついていった、だと…… Razfahd ……お前は、 自分の立場をわかっているのか? Luzaf ……。 Aphmau なによ。 に、兄さまこそ…… Aphmau ……こんなとこで そ、そんな、皇国の敵の蛮族の女…… ラミアなんかと仲良くして……。 Razfahd わからんのか? お前を捜すためだ。 Aphmau だからって、そんな…… ラミアは敵よ? 邪悪な蛮族なのよ!? Aphmau 兄さまだって、 子供のころ、マウにそう教えてたじゃない! ……ちがうの!? Ovjang じょうしょう! あふまうノしつもんニ、こたエヨ! Razfahd 落ち着け。 アフマウ……。 Aphmau 誤魔化さないで! Mnejing ……答えぬということは、 答えられぬということか……。 Razfahd そうではない。 いいか、アフマウ……彼女らは お前の憎む狡猾なラミアではない。 Razfahd 我が軍を助けてくれている…… いわば、人間の味方なのだよ。 Razfahd お前の傭兵…… そう、この[Your Name]君のようにね。 我々に害をなすことは絶対にない。 Aphmau マウの…… [Your Name]みたいに……? ほんと? Razfahd ああ、約束しよう。 ??? クククッ…… Luzaf 笑わせてくれるっ。 Luzaf その合成獣が無害だと? Luzaf ラミアを作り出した 貴様らにとっては、だろう? Luzaf ククッ……人間の味方だと? Luzaf 半死半生の俺の仲間を もてあそんだ挙句、喰い殺した こいつらがか!? Razfahd 貴様、何者だ? ……何を知っている? Luzaf ……すべてを。 Razfahd ふっ、 狂信者の戯言だな。 Razfahd その身なり、 コルセアの末裔か? Razfahd ……いや、違うな。 連中が俺の前に姿を見せるなど、あり得ぬ。 Razfahd ! Razfahd そうか、 貴様が漆黒の……。 Luzaf ならば、どうする? Luzaf けしかけるか? そいつらを…… Luzaf かつて、 貴様の父祖がそうしたように。 Aphmau そんな…… Ovjang ていとくノ、いっテルコトガ まことナノカ……? Mnejing ……丞相、 ……答えよ。 Razfahd ……アフマウ。 Razfahd 我らが父君の 末期のお言葉を覚えているか? Aphmau …………。 Mnejing ……我は聖皇…… ……聖皇は国家なり……。 Luzaf ! Razfahd お前も好むその言葉。 単に、聖皇の絶大な権力を 述懐しているだけではない……。 Razfahd 東西内外に 数多の敵を抱える、 我がアトルガンの広大な領土…… Razfahd そして、そこに暮らす一千万の 皇国民の命を護らねばならぬ 聖皇の、重大な責任をも意味しているのだ。 Razfahd そのためには、 時に非情に徹せねばならぬ。 Aphmau ……でも。 Aphmau 父さまは、こうも おっしゃってたって聞いたわ。 Aphmau 皇国を治むるに覇道はいらぬ。 Aphmau 王道をもって治めよって……。 Aphmau ラミアを使うことは 誰の目から見ても正道ではないわ。 父さまの教えに反してる……違う? Razfahd ……アフマウ、 今にわかる時がくる。 Aphmau 兄さまは、 いつだってそう…… Aphmau 肝心なことになると、 マウを子供扱いするの。 ただ、言うことを聞いてろって……。 Aphmau それなのに、 聖皇の責任は押しつけるなんて…… Razfahd ナシュメラッ!!! Razfahd お前には、 聖皇としての覚悟がなさすぎる。 Razfahd いかなる王といえど、 己が手を、己が心を汚さずに 臣下に血を流させることなど、できんのだ。 Razfahd なぜ、それがわからん? Nashmeira ……知らない。 ……そんなの関係ない。 Nashmeira だったら…… だったら…… Nashmeira 兄さまが聖皇になれば よかったじゃないっ! Razfahd ふざけるなっ! Razfahd いいか、聞けっ! Razfahd ……俺は かつて、第一皇位継承者だったのだ……。 Razfahd しかし、父君が いまわの際に後継者として口にされたのは お前の名だった……。 Nashmeira ……そんなの知らない。 Nashmeira ……マウは……マウは……。 Razfahd なぜだか、わかるか? Nashmeira ……知らない。 ……知りたくない。 だって、マウは……マウは…… Nashmeira 聖皇なんて なりたくなかったんだもの! Razfahd その理由、 ……教えてやろう。 Razfahd そのとき、 俺の身体には…… Razfahd こいつらと同じ、 魔物の血が流れていたからだ……。 Razfahd お前が嫌い 父上も蔑んでおられた、 ラミアと同じ青い血がな……。 Nashmeira !! Nashmeira ……どういう……こと……? Razfahd これだけは、 言いたくなかったが…… Razfahd お前が寺院に 預けられた後のことだ…… Razfahd 俺は東方戦線で 父上の命に背いて前線で戦い、 瀕死の重傷を負った……。 Nashmeira ……そんな! Razfahd 一か八か 再生力の高い魔物の血を輸血する他、 助かる術はなかったのだ……。 Nashmeira ……マウ、知らなかった。 Razfahd もう、わかったな? Nashmeira ……はい。 Razfahd では、 大人しく皇宮へ帰れ。 Nashmeira ……うん。 でも、兄さ…… Luzaf いい加減にしろッ! Luzaf このまま帰すと思うか? アトルガンの皇族どもめがっ! Luzaf 冥路の騎士よ…… このルザフ、礼を言おう! Luzaf ついに ここで我が民の…… 我が仲間の仇を討つことができる。 Luzaf 貴様らを、 根絶やしにすることによって、な……!? Razfahd !? Nashmeira !! Ovjang ドウシタノダ、ていとくハ!? Mnejing ……あの幻影、 どこか……。 Nashmeira ……あれは、冥路の…… Razfahd 死に損ないの魔物めがっ。 Razfahd かかれっ。 Flit くすくすくすっ! Flit 予定よりも 早かったですね~。 Razfahd ! Nashmeira ルザフ、やめて!!! Razfahd ナシュメラ、下がれ! Flit あれ、あれれ……? おかしいですねぇ?? こんなはずでは…… Mnejing ! ……フリットか!? Ovjang はやク、 われわれヲ、ふねマデ、つレテゆケ! Flit なんですって!? ぼくに命令するなんて100年はや…… Nashmeira いいから、はやく! Nashmeira フリット! つべこべ言わないで、 マウとルザフを船へっ!! Flit はっ、はい!? Razfahd ナシュメラ、何をしているっ! Nashmeira 兄さま。 ごめんなさい。……マウは 今は、この人の側にいたいの。 Nashmeira さよなら。 Ovjang しんぱいスルナ。 Mnejing ……さらばだ。 Nashmeira [Your Name]、 あなただけはマウの味方でいて! Nashmeira せっかく 来てくれたのに……許してね。 Razfahd 待て! Razfahd ……くそっ。 Razfahd ……ナシュメラ。 俺は、お前を……。 Raubahn ラズファード様。 至急、お耳に入れたき議が……。 Razfahd 本当か? Raubahn 御意。 至急、お戻りを。 Razfahd [Your Name]。 Razfahd アフマウ捜索の件だが……。 Razfahd ルザフの関与が はっきりした以上、もはや 傭兵であるお前の手に余る。 Razfahd これにて、任を解く。 Razfahd 陛下は、 ルザフとともにいる。 Raubahn なんと!? Razfahd 不滅隊は、 アフマウの捜索を打ち切り、 すべてアシュタリフ号の監視に回せ。 Raubahn 御意。 Razfahd ルザフ…… おそらく、やつが次に選ばれた騎士だ。 油断するな……。 Raubahn ははっ! Raubahn わかっていようが、 この件については他言無用。 Raubahn 無論…… 山猫の社長にも、だ。 Raubahn 金は送る。 社長には、無事、 皇宮の任務を完遂したと伝えるのだ。 Raubahn 行けっ。 称号:ナシュメラの傭兵 ▲ 暗雲の去来 逢魔が時 砂上の楼閣 ■関連項目 アトルガンミッション , カダーバの浮沼 Copyright (C) 2002-2015 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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「逢魔が時に柳は囁く」 論理メガネ作のCoCシナリオ 巡り月華シリーズ あらすじ
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逢魔が時に光る瞳 依頼主 :イヴォロー(黒衣森:北部森林 X21-Y26) 受注条件:レベル28~ 概要 :フォールゴウドの山師イヴォローは、冒険者に告白したいことがあるようだ。 イヴォロー 「ああ、やっと誰かに話すことができます。 メドロドを余計に怯えさせると思い、黙っていたのですが、 実は・・・・・・僕も「目玉の化け物」を見たのです! ちょうど、メドロドが化け物を見たのと同じころ・・・・・・ 作業終了の鐘を聞いて帰ろうとした僕の前に、 ふっと影が落ちました。 見上げると、ギョロリとした目が僕を睨んでいたのです! 思わず悲鳴をあげて、一目散ですよ・・・・・・。 もう化け物がいないか、西の岩場を見てきてくれませんか?」 イヴォローに報告 イヴォロー 「えっ・・・・・・西の岩場に、 「ヘヴィ・ベーンマイト」が現れたんですか? そいつは屈強な山師も震えあがる、凶悪な魔物なんですよ!? まさか倒しちゃうだなんて・・・・・・。 さすがは冒険者、すごいですねぇ! ・・・・・・でも、おかしいな。 たしかに「目玉の化け物」を見たと思ったのに・・・・・・ まさか、僕の見間違いだったのでしょうか?」
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6時間目の終了後、帰宅しようと鞄に教科書を詰め込んでいる時、あまり親しくしていない クラスメイトが声をかけてきた。 「小早川さん…… 3年の柊先輩が呼んでいるわよ」 「あ、ありがとう」 彼女に礼を言ってから、私は席を立った。 「かがみ…… 先輩」 廊下に出ると、柊かがみ先輩が待っていた。 ややつり目で、ツインテールが特徴的な、誰もが振り向く様な美人だ。 スタイルも良くて下級生からも人気がある。 「ゆたかちゃん。今は時間あるかしら」 かがみ先輩は、どこか不機嫌そうな顔をして尋ねてきた。 「え…… ええ」 「屋上で話があるの」 私は小さく溜息をつき、先輩の後をついていった。 屋上に出るとずいぶんと涼しい風が吹いている。 残暑は依然として厳しいが、日が沈む時間はずいぶんと早くなっている。 茜色に染まった空を眺めていると、先輩が話しかけてきた。 「今日、わざわざゆたかちゃんを呼んだのはね…… 」 「はい」 かがみ先輩は、先程からの不機嫌な表情を変えずに、前髪をかき上げながら言った。 「ゆたかちゃんは、こなたと付き合っているの? 」 「どうしてそんな事を、かがみ先輩に教えなければならないのでしょうか」 私は、冷静を保つように努めながら切り返した。 「こなたと、正直に答えられない何かをしているわけね」 「答える必要はないと思いますが」 私は、厳しい目線を送ってきた先輩をにらみ返した。 こなたお姉ちゃんとは付き合っていて、既にえっちをする関係になっているけれども、 わざわざ他人に報告する義務はない。 「ふん」 かがみ先輩は鼻で笑った。 「まあ、いいわ」 「それで、何の用ですか? 」 しかし、かがみ先輩は腕を組んで何も言わないまま笑っている。 給水塔の陰が、かがみ先輩の細かい表情を眩ませており、どこか怖い。 「用がないのでしたら、私、帰ります」 沈黙に耐えきれなくなって、身体を翻した時―― 背後から現れた人影に、強く腕を掴まれた。 「な、何をするんですか? 」 声をあげて逃れようとして、私は驚愕した。 「み、みなみちゃん! 」 「ゆたか…… 」 「ど、どういうこと? 」 私は混乱してしまい、身体が全く動かない。いや違う。 私と、みなみちゃんでは基礎体力に雲泥の差があるから、いくら力を振り絞っても動きやしないのだ。 「ゆかたは、泉先輩に惑わされている」 「そ、そんなことないよっ」 私は、みなみちゃんの顔を見上げながら続ける。 「どうして、みなみちゃんはそんな悲しいことを言うの? 」 私の言葉に一瞬、みなみちゃんは辛そうな顔を浮かべた。 「ふふ。ゆたかちゃんは凄いわね。こなたに続いて、みなみちゃんもたぶらかそうとするなんて」 「な、何を言っているのですか! 」 憤然として、かがみ先輩を睨みつける。 「かがみ先輩が、みなみちゃんを焚きつけたのですか! 」 なんて腹黒い先輩なのだろう。 「そんな事ないわよ。私はただ事実を述べただけ。ねえ。みなみちゃん」 動きを止めていたみなみちゃんに、かがみ先輩が怪しげに囁く。 「このままでは、本当にゆたかちゃんはこなたのものになるけれど」 みなみちゃんの肩がぴくりと動く。 「みなみちゃんは、それでいいのかしら? 」 動揺が露わになって、身体が小刻みに震える。 「かがみ先輩に騙されないで! 」 私は後ろから抱かれたまま、みなみちゃんを必死で説得しようと声をはりあげる。 「いまなら、ゆたかちゃんはすぐ近くにいるわ。どういう選択肢を選ぶのかは、みなみちゃんの自由よ」 かがみ先輩は、逡巡するみなみちゃんに向けて、露骨にけしかける。 みなみちゃんは、尚も暫く迷っていたけれど…… 「ごめん。ゆたか…… 」 みなみちゃんは、正面に回り込むと、私の唇をあっさりと奪い取ってしまった。 「ん、や、やだっ…… んんっ」 くぐもった声をあげながら、みなみちゃんの懐から離れようともがくが、完全に拘束されてしまっている。 「ゆたか、大好き…… 」 長いキスの後、唇から離したみなみちゃんが満足げに囁いた。 「お願い、みなみちゃん、やめて」 「ごめん。ごめんね。ゆたか…… 」 みなみちゃんは口では謝るけれども、容赦なく手は動いており、私のおしりを卑猥に撫で回す。 「きゃっ」 みなみちゃんは、私の悲鳴をききながら、うっとりした顔を浮かべて呟いている。 「ゆたかのお尻、とっても小さくて、可愛い…… 」 「や、やだよ、おねがい、やめてよう」 「ゆたか、大好き…… 」 みなみちゃんは恍惚とした表情のまま、スカート越しに、おしりの割れ目をいやらしく撫でていく。 ど、どうしよう。 「ふふ。ゆたかちゃんってとっても可愛い喘ぎ声を出すのね」 しばらく見物していたかがみ先輩が、ゆっくりと近寄ってくる。 「近づかないでください! 」 「怖いわね」 かがみ先輩は小馬鹿にした声をあげながら、私の前に立ちはだかって、制服のスカーフをはぎとった。 「やめてくださいっ」 「ふふっ、ゆたかちゃん、もっと思いっきり抵抗してもいいのよ」 かがみ先輩は、無意味な抵抗を試みる私を愉しそうに眺めながら言葉を続ける。 「ゆたかちゃん。とっても可愛いブラしているわね」 「み、みないでくださいっ」 顔を真っ赤にしながら抗議をする私に、かがみ先輩はとても嫌な笑みを浮かべながら言った。 「そういえば、こなたが胸を揉めば大きくなるって言っていたわね」 「ゆたかちゃんの小さくてカワイイ胸を、じっくりと揉んであげるわ」 「余計なお世話です! 」 私はぷいっと顔を横に向けたけれど、かがみ先輩にブラの上から、小さすぎるふくらみを揉まれてしまう。 「やっ、やだっ…… んんっ」 ブラのカップの形がいびつに歪む度に、はしたない喘ぎ声をあげる。 「ふふ。少しは感じてきたかしら」 かがみ先輩は、口の端をゆがめながら、ブラのホックを外す。 お気に入りのブラは私の胸を保護する役割を放棄して、だらしなく垂れ下がった。 「や、やめて、お願いですから! 」 「ゆたかちゃんの乳首って、さくらんぼみたいでとても可愛らしいわ」 かがみ先輩は、私の言葉を無視して、乳首の形を論評した。 「ゆたかの胸…… とても綺麗」 背後から執拗にお尻を撫でていた、みなみちゃんの声も、私の心を傷つけていく。 「みなみちゃん。お願いだから変なこと言わないでよ」 私は、耳まで真っ赤になりながら、擦れた悲鳴をあげるけれど、みなみちゃんは容赦なく、 スカートのホックを外して脱がしにかかる。 「いやっ、いやあっ、みなみちゃん、お願いっ、やめてっ」 必死で足をバタつかせながら抵抗するけれど、体力の差はいかんともしがたく、スカートは地面に落ちてしまう。 「や、やだあ」 恥ずかしさのあまり、私は地面にへたりこんだ。 強い日差しに暖められたコンクリートの感触がお尻に伝わり、とてもきもち悪い。 「ゆたかの下着、とても可愛い…… 」 みなみちゃんは、露わになった私の下着を食い入るように見つめている。 「クマさんパンツを穿いているかと思ったけど、残念ね」 かがみ先輩は嘲るような表情を見せながら言った。 「こ、こども扱いしないでください」 怒りに震えながら、私は二歳年上の先輩を睨みつける。 「それなら、お望みどおりに、もっと大人なことをしてあげるわ」 先輩はとても楽しそうに言うと、今度は私の背後に回って座り、後ろから胸を揉み始めた。 「ひゃあっ、やめて…… かがみ先輩! 」 小さな胸を強い力で揉みしだかれて、強い痛みがはしった。 「ん…… んあっ、だめ、だめえ…… 」 乳首のこりこりとした部分を摘まれて、執拗にいじり回された。 「ふふ、ゆたかちゃん。胸ばかり心配してもダメよ」 私が下半身をみると、みなみちゃんが身体をかがめて、私のショーツに顔を近づけている。 「ゆたか。下着にシミが…… 」 「みなみちゃん。そんなところ見ちゃダメッ」 しかし、みなみちゃんは私を無視して、言葉を続けた。 「濡れた下着は身体にわるいから」 ぼそりと言うと両手を下着に伸ばして、最後の一枚を脱がしにかかる。 「やめてっ、おねがいっ」 泣き叫びながらばたつかせた私の足が、みなみちゃんの顔にあたった。 「ご、ごめんなさい」 しかし、みなみちゃんは顔色一つ変えずに、私のショーツを脱がす。 「ゆたか。暴れないで」 怖い顔をみせて威嚇してから、両手でふとももをかかえて、股間に顔をくっつける。 「やだあ、みなみちゃん、きたないよお」 アソコに顔をうずめるクラスメイトに大きなショックを受けながら、私は力なく何度も頭を振ることしかできない。 「ゆたかのアソコ、すごくいい匂いがするね」 「ダメ、嗅いじゃだめ…… 恥ずかしいよう」 髪を振り乱しながら尚も抗うけれども効果はなく、陶然とした表情を浮かべたみなみちゃんによって、 アソコに唇をつけられてしまう。 「くちゅっ」 「やだ、やだやだ。んあっ、んああああっ」 全身に悪寒が走る。 甲高い悲鳴をあげながら、身体をよじって逃れようとするけれども、四肢はしっかり拘束されてしまっており、 身動きをすることができない。 「ゆたかのジュース、とても美味しい」 「そんな事いわないで…… 」 私は、目の前に繰り広げられる異常な事態に混乱してしまい、幼児のように泣き叫んだ。 「ゆたかちゃんのアソコ、とても、いやらしいわね」 かがみ先輩は、私の乳房を揉み続けながら、嘲りの言葉を投げつけてくる。 しかし、私のアソコからは、とろとろと流れ出している愛液が、コンクリートの床に垂れ落ちてしまっており、 ロクに反論することができなかった。 「んあっ、私、もう、だめ、お願いっ」 「ゆたかちゃん。みなみちゃんに思いっきりイカセてもらいなさいね」 先輩は愉悦に満ちた表情を浮かべながら、私の首筋を舐める。 「ひゃん。そこはダメ、だめなのっ」 気持ちいいはずはないのに、淫らな声が出てしまう。 「ゆたか。我慢しなくていいから…… 」 みなみちゃんは、アソコから流れ出る愛液を吸いながら囁いた。 「んんっ…… みなみちゃ…… ん、だめ」 私は、蕩けるような快楽に流されそうになりながらも、僅かに残った理性を懸命に保ちながら、首を何度も横に振った。 「ゆたか。私に身をまかせて」 みなみちゃんが甘い言葉で囁きながら、私の一番敏感な部分を舌でつつく。 「ああっ、んああああっ、いや、いやあああっ」 「ゆたかのお豆、大きく膨らんでいるね」 みなみちゃんのうっとりとした声が耳朶に届く。 私は、全身から汗を噴き出しながら、何度もえづいて、淫らに腰を振り続ける。 「あん、わたし、もう、ああんっ、だめ、だめなの」 「上も忘れちゃだめよ。ゆたかちゃん」 かがみ先輩が、弄っていた乳首を強くねじりあげた。 「痛いっ、やめて、やめてくださいっ」 みなみちゃんは、私のクリの包皮をめくりあげてしまう。 「やあ、いやあああああっ」 同時に二か所の性感帯に愛撫を受けて、私は疼くような苦痛と、溶けるような快楽の波に弄びながら叫んだ。 「やだ、もうやだ、わたし、わたし、いっちゃう」 緩んだリボンが取れて、まとめていた髪が肩に落ちる。 「ぐちゅっ、ぐちゅう…… 」 アソコをいやらしく舐める音が淫らに響く。快楽の間隔がどんどん短くなっていく。 「やだ、やだああ、本当に、いっちゃう、いっちゃうよ」 「ゆたか…… イッて」 みなみちゃんが呟き、私の膣に指を付き入れた。 「だめ、だめっ、もう、イク、いくよっ」 みなみちゃんの指が、膣中で激しくと動き回ったことにより、限界を超えてしまう。そして―― 「んあああ、やだ、もう、やだあ、んああああああああっ、ああああ」 ひときわ大きな叫びながら、私は、絶頂に達した。 「ゆたかちゃん。とても良かったわよ」 コンクリートの床の上にへたり込んでいる私を見下ろしながら、かがみ先輩は、満足そうな表情を浮かべた。 「これに懲りたら、私のこなたに手を出さないことね」 かがみ先輩は結わえた髪をいじりながら、あっさりと立ち去ってしまう。 「ゆたか…… ごめん」 みなみちゃんは流石にバツの悪そうな顔をしている。 「今から保健室に…… 」 「触らないで! 」 私は、差し出された手を振り払った。 「出てって! お願いだから出てってよ! 」 泣き叫びながら、みなみちゃんを激しく拒絶する。 「ほんとうに、ごめん…… 」 みなみちゃんは、とても悲しそうな顔をしながら、とぼとぼと去っていく。 ひとり残された私は、身体の奥から生じる疼きに身を委ねながら、しばらくは瞬き始めた星空を見上げていた。 そして、空が真の闇に支配されてから、のろのろと立ち上がる。 「許さない…… 絶対に許さないから」 消耗しきった身体を引きずりながら、散らばった衣服を集めて、ショーツに手をかける。 「う…… ひぐっ」 とろりとした愛液がふとももに垂れて、先程の陵辱劇を鮮明に思い出してしまう。 私は、皺だらけになった制服を抱えながら、ぽろぽろと涙を流し続けた。 (おしまい) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 23-251氏に戻る コメントフォーム 名前 コメント ゆたかかわいそうに -- 九重 (2008-08-28 18 20 44) こなゆただと必ずじゃないがこの二人が立ちふさがるからなw とくにかがみはこえええwww -- 名無しさん (2008-08-21 13 47 52)
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0.フォーカード・スプレッド 秋葉原に集うカードは4。 この枚数を使うスプレッドで、最も単純なのは、フォーカード。 一枚目が、おかれた現状を。 二枚目が、試練に挑む者の性質を。 三枚目が、直面する苦難の原因を。 四枚目が、未来の在り様を。 それぞれ暗示する占いです。 試してご覧に入れましょう。 一、『隠者』の正位置。 示すは、崩壊。悪事。叛逆。 二、『魔術師』の逆位置。 示すは、躊躇い。覚悟の不足。不安定。 三、『月』の正位置。 示すは、隠れた敵。危険。欺き。 四、『法王』の逆位置。 示すは、弱さ。傷つきがちな善性。 ――愚者の旅路(アルカナジャーニー)、第一の週、幕開けにございます。 1.世界は私の手の中に 小山内 姫――『隠者』逆位置 走る。走る。走る。 アスファルトから伝わる衝撃。 単調な律動に、思考が拡散する。 可愛いって何。 きれいって何。 ステキって何。 結婚が幸せ? 交際が幸せ? 人生の墓場? 誰が理解してる? 誰がわかってる? お前が? ほんとに? 脳を充満する疑問を、原始的な衝動が砕いて汗に流していく。 走行は、狩猟の快に通じる。即ち生を渇望する根源の熱量だ。 息を整え、女はくるりと芝居がかったターンを決めた。 早朝の街に、彼女の奇行を見とがめる者はいない。 一人芝居を、流行りのアニメの広告だけが見下ろしている。 東京、秋葉原。 地下アイドル兼コスプレイヤー、小山内 姫にとって、この街はスタート地点だ。 最初は、好きな漫画のコスプレをして。 ファンができて、地下アイドルなんて肩書も背負って。 気付けば、同世代はみんな引退した。 今のユニットも、主力は若いメンバーで、自分は添え物だ。 その自覚は、小山内自身にもある。 スマホを取り出し、絶妙な角度での自撮り。 盛れているか、確認するまでもない。 画面に写る小山内 姫は、いつも、最高に歪んで、最高に美しい。 秋葉原の外れ、とある雑居ビル。 小山内は、施錠された外階段のドアにスマホを向け、画面の中のそれを、指で摘まむ。 「――リダクション(ちぢめ)」 ぐにいぃぃぃぃ。 スマホの画像と連動し、現実のドアまでもが縮小する。 空いた隙間から小山内は悠々と不法侵入を果たし、 「――アンドゥー(もどれ)」 「←」ボタンをタップして、画像を戻す。 現実のドアも、元の施錠された状態へと復元された。 魔人能力『S.N.O.W』。 スマホやカメラで撮影した写真や映像を加工して歪め、現実に反映させる、小山内の魔人能力である。 便利ではあるが、制約も多い。 まず、「魔人」には無効。 コピー&ペーストで物体複製も非実用的。 試しにテレビのリモコンを複製し、丸二日立ち上がれなくなったことがある。 それ以来小山内は、能力による物の複製を行っていない。 あくまで基本は「歪める」だけの力。 護身に役立つ程度の能力でしかない。 けれど、それも使いよう。 彼女は足取りも軽やかに外階段を登り、ビルの屋上に立った。 眼下には、朝焼けに照らされた秋葉原の街。 雑多で、欲にまみれ、歪んで。 捻じれ、変わり果て、眉をひそめるものも多い。 小山内にとって、世界で一番美しい場所だった。 スマホのシャッターボタンをタップ。 この光景は、彼女のメートル原器だ。 今晩は凱旋ライヴ。昔馴染みは誰も来ないだろうけれど。 それでも、この光景が、手の中にあるならば、大丈夫。 この街は美しい。それを手にしている私も、美しい。 「うし、やってやんよ!」 さあ、最低の(うつくしい)一日を、始めよう。 2.残されたもの 福院・メトディオス――『法王』正位置 『shall done! ”しないと”の足音 shall done! 未来壊す音符(ノート)』 明滅するスポットライト。 ステージで、六人の女性が歌い踊る。 熱狂する客との距離はひどく近い。 福院・メトディオスにとって、落ち着かない空間だった。 周囲の盛り上がりに対し、どうしたものかと戸惑っている。 表の顔は物静かな十字教徒。 裏の顔は逃亡生活を続ける抜け忍。 どちらの彼も、このライヴ会場には不似合いである。 地下アイドルユニット『shalldone』。 活動規模は小さいが、動画配信でコアなファンの多いユニットだ。 彼女たちを知ったのは、メトディオスがまだ辻一務流の里にいた頃。 妹が、年相応のはにかんだ笑顔で語った、憧れのアイドル。 ユニットリーダー、小山内 姫。 ポスターを見かけ、妹の”憧れ”に触れてみようと思ってしまった。 それが、彼がここにいる理由だった。 『歩こう 義務でなく欲望と 争う 痛みを越えた友と』 小山内がソロパートを歌い上げる。 芸事にうといメトディオスだが、彼女が他の五人と違うのはわかった。 他の女性が、均整、理想を体現するのに対し、小山内に感じるのは熱と混沌だ。 気怠さ、逡巡、衝動、自負。それは、どろりとした生々しい魅力だった。 そんなところに、妹は惹かれたのか。 ――忘れるな。その憧れごと、貴様が妹を殺したのだ。 胸で軋む悔悟。 『今』『みんな』『笑顔』『見せて』『世界』『描いて』 歌は盛り上がりを増し、メンバー各々が韻を踏んだ歌詞で畳みかける。 リズムに合わせてペンライトを振るうファンたちの中で、棒立ちをしているのは、メトディオスだけ―― ――ではなかった。 隣に佇んでいた少女。 ぼんやりとした表情の、垢ぬけない容姿。 目が合った。 互いに気づく。 この場で、彼女とメトディオスだけが、異質。 『願いへ――』 6人のハーモニーが、観客たちの熱狂の幕を引いた。 ― ― ― ― ライヴの後はファンとの握手会らしい。 ライヴ中に目があった少女は真っ先に列に並んだ。 その様子に興味を持ち、メトディオスは、会場の隅で聞き耳を立てていた。 辻一務流忍術、波の業。 聴覚を研ぎすまし、音を指向的に聞き分ける対隠術業。その応用だ。 なぜ、こんなことをしているのか。 少女の姿に、妹を重ねたからか。 熱狂に染まれぬ様への、親近感からか。 それとも―― 「マリちゃん、死んじゃったのか」 「マリ姉、よく、姫さんのお話してました」 「握手会、何度も来てくれたし、ソシャゲのフレだったんだよ」 「はは、最終ログイン67日前って。最後まで、普通にログインしてたんですね」 「ありがと。教えにきてくれて」 「最期に、ちゃんと伝えたくて」 「それって――」 「はい、時間終わりです。次の方お願いしますー」 「さようなら、姫さん」 漏れ聞く会話の断片。 おおよそ理解できた。 あの少女も、誰かを失ったのだ。 メトディオスの妹と同じく、小山内 姫に憧れた、誰かを。 そして、供養のためにライヴに訪れ、死を報告した。 しかし、彼女は別れ際、なんと口にした? 最期に。そう言わなかったか。 ファンではないから、通うつもりはないから? それだけだろうか。 目が合ったときの少女の表情。何か虚ろを抱えたような顔。 覚えがある。当然だ。 ああいう表情を、メトディオスは、毎日のように鏡で見続けているのだから。 メトディオスは、たまらずに駆けだした。 会場を出たところで、少女に追いつく。 「あの」 声をかける。きょとんとして振り返る少女。メトディオスは我に返り、後悔した。 何を言えばいいのか。 見も知らぬ少女に、大の大人が。これでは不審者だ。 「――その。さっき、話、聞こえて。自分も、妹が、姫さんのファンで、その、死んでしまって、それで、代わりにって、ライヴに、でも、余計苦しくて、けど、あの――」 言葉が出てこない。 戦闘中ならば、いくらでも挑発の言葉が出てくる舌なのに。 「でも、やっぱり私と貴方の事情はきっと全然違って、だから貴方が悲しいのを、想像しかできなくて、けど――その」 少女は首を傾げながらも、真っすぐにメトディオスに向き直り、耳を傾けてくれた。 周囲の歩行者たちは何事かと珍妙な二人を眺めている。 「――「最期に」なんて。自分で、命を終わらせてしまうのは、もっと悲しいです」 言った。言ってしまった。 勝手に聞き耳を立てて、勝手に事情を妄想して、勝手に共感して。 どうしようもない変人だ。傍迷惑な男だ。 羞恥心で、耳までも赤くして、メトディオスは俯いた。 「……失礼しました。それだけです。私はこれで――」 「ありがとうございます!」 去ろうとしたメトディオスの裾を引いて、少女は微笑んだ。 「自殺なんて、しません。ライヴは、マリ姉を思い出しちゃうから、最後(・)ってだけです。でも、ありがとうございます。少し……ううん、すごく、嬉しかったです!」 メトディオスの胸元のロザリオを見て、少女は頷いた。 「お兄さん、牧師さんみたいです。心を見通して、背中を押してくれる人」 別の羞恥に、メトディオスはさらに口ごもる。 「本当にありがとうございます。それと」 自分はそんな大層なものではない。そう言葉にするより早く、少女は一礼をして、人混みに消えた。 「明日は、秋葉原、来ない方がいいですよ?」 そんな予言めいたことを言い残して。 3.ルナティック 路田 久揺――『月』正位置 月下、少女は夕空を行く。 路田 久揺は、飛ぶ魔人である。 飛翔する。飛翔する。飛翔する。 大気を裂く圧。頬を叩く風。 単調な律動に、思考が研ぎ澄まされていく。 ――プッ、あはは! ここでUNO出してくる!? ――久揺、わたし、あと数時間で18歳だよ。 ――今日こそ、私を空に連れて行ってよ。 ――世界滅亡かな。わたしが願うのは。 彼女の言葉が、風によって磨き上げられ、鋭さを増していく。 眼下の景色に心動くことはもうない。 久揺の世界は、あの日から彩度(いろどり)を失った。 香坂 マリナが死んだ影響に、久揺自身が驚いていた。 夕方の上級生の教室。変わらない放課後の景色に、席一つ分だけの空白。 そんな些細な欠落によって、久揺は社会から「切り離された」。 モノクロームの世界。無貌の仮面のような級友の笑顔。 久揺が学校に行く頻度は減り。 代わりに、一人で月夜を飛ぶことが増えた。 曰く、狂気は月よりもたらされるという。 ならば、久揺の下に『月』のカードが舞い降りたのは、そういうことなのだろう。 ― ― ― ― 黄昏時の秋葉原。中央通りに面した、老舗の商業ビルの屋上。 久揺は、LEDの光とイラスト看板で装飾された街並みを眺める。 鉄柵の手すりに跨った、幼い子どものような恰好で、久揺は足をばたばたさせた。 「マリ姉、大丈夫。願いはちゃんと、叶えますから」 久揺の手には、一枚のカード。 ――大アルカナ#18、『月』。 意識をそのカードへと向けると、音叉が共鳴するように、遠くから似た反応を感じる。 アルカナが、惹かれ合っているのだ。 20枚のカードを束ねよ。 さすれば、願いは叶えられん。 これ即ち、愚者の旅路(アルカナジャーニー)である。 カードから流れ込んできた情報を反芻する。 自分は、カードとの同調が人より強いらしい。 昨日の出来事を思い出し、久揺はそう考えた。 少なくとも二人、昨日のうちに、久揺はカードの所有者と会った。 しかし、それに気付いたのは久揺だけ。相手は何ら特別な反応は見せなかった。 これは、大きなアドバンテージだ。 一人目の所有者。 マリ姉――香坂 マリナの好きだったアイドル。 結局、彼女を救ってはくれなかったもの。 「小山内 姫さん」 マリ姉の愛した歌姫は、この愚かな殺し合いの、参加者だった。 不思議と、悲しいとは思わなかった。 「あと……変なお兄さん」 二人目の所有者。 ライヴ後に声をかけてきた、自分と似た痛みを持つ青年。 彼とはできれば戦いたくなかった。 が、向かってくるなら、話は別だ。 世界滅亡。それが、久揺に残されたマリ姉の生きた証。 愚かで、無意味で、傍迷惑なこの狂気こそが、月下の魔女の動力源。 これまでの彼女を知る者であれば、驚くに違いない。 天然ボケで、無害。そんな彼女がまさか、と。 しかし、路田 久揺は、飛ぶ魔人である。 人に本来存在しない機能を当然と考え、世界を歪めるものだ。 その認識は、人の社会の枠組みを容易く飛び越える。 路田 久揺は、人の悪意に気付かない。 それは、時に人の善意をも、重んじないことでもある。 路田 久揺は、人との距離を気にしない。 それは、時に人の事情や背景を斟酌しないことでもある。 同じアルカナが、正位置と逆位置で、同じ属性のまま意味を逆転させるように。 誰からも愛された少女は、ここに、世界の敵たる魔女として反転する。 久揺は柵から降り、愛用の仕込み箒を手にした。 数日前からの下準備。 ビルへの『負荷(チャージ)』は、充分だ。 空から地を見下ろす久揺は、首都高1号上野線に目を止める。 交通量は、多すぎず、少なすぎず。 目標を見つけるのに丁度良い。 程なくして、彼女は一台のタンクローリーを捕捉する。 狙いは定まった。 「さあ。素敵(さいあく)な一夜を、始めましょう」 4.ヒロイン(偽) 橿原 純一郎――『魔術師』逆位置 何が起きた? 惨状の中、橿原 純一郎は、眼前の出来事を、咀嚼できずにいた。 夕刻の秋葉原。新刊を買いに本屋に向かう途中、「それ」は、空から降ってきた。 タンクローリー。 本来ならば宙を舞うはずがない巨大な質量が、ほど近いビルに衝突する。 轟音。爆風。熱波。 何十分、何時間、歩き、走り回ったろう。 悲鳴。逃げ惑う人の波。 怒号。鳴り響く車のクラクション。 炎。爆音。振動。 暗がりに包まれた秋葉原を、赤い炎が煌々と照らす。 漫画やアニメを心の支えとする純一郎にとって、この街は自分を解放できる貴重な場所だ。 今では、下宿のある三鷹よりも愛着がある。 付け加えるなら、彼の最も熱中している漫画「魔法学校の二回生ジュン」の舞台が、この街を模した「学園都市アキバ」であることも大きかった。 街を歩くたび、主人公ジュンやヒロイン未森とすれ違うかもしれないと、わくわくした。 それが今、日暮れからの数時間で、一転、惨状と化した。 呆然とスマホでSNSを確認する。 『空飛ぶタンクローリー目撃』 『秋葉原でビルの炎上』 『タンクローリーがビルに落下、爆発か』 『自動車暴走多発、秋葉原各地で衝突炎上事故。組織的テロか』 『電車ダイヤに大幅な乱れ』 『警察、消防は交通寸断で後手に』 現実味のない文字が並ぶ。 信号は破壊され、どこが安全かもわからない。 遠く、近く、あちこちで車や建物が燃えている。 テロ? なぜ? どうして今? 災厄は現在進行形。また爆破音。振動。 複数犯? 避難? どこに? 混乱のまま走り出そうする純一郎の手に、一枚のカードが顕現した。 ――大アルカナ#1、『魔術師』。 ようやく純一郎は理解する。 これが戦場。20のアルカナを奪い合う魔人が織りなす、地獄なのだと。 こんなつもりではなかった。 出会ったら一対一で戦う。無関係な者は巻き込まない。 そんなクリーンな決闘を、勝手に想像していた。 足がすくむ。 純一郎は、平凡で気が弱い、少し勉強ができるだけの男だ。 こんな虐殺の場で、闘いを始める覚悟など―― キキィィィィィィ!!! 耳を裂くような音が迫る。 迫るのは歩道へと突っ込んでくる乗用車。 「な――」 間に合わない。純一郎に避けられるはずもない。 魔人能力の発動? 無理。轢かれる―― 「――リダクション(ちぢめ)!」 その、はずだった。 しかし、突っ込んできた車は、突然に縮み、指先ほどのサイズとなって、純一郎の視界ぎりぎりを行き過ぎた。 ガチャン! 後ろのビルのディスプレイが割れる。 だが、それだけ。 もし、そのまま衝突していたら、純一郎を轢殺の上、新たな火災を起こしていただろう。 「おい、そこの! 怪我はねぇか!?」 駆け寄ってきた女性の姿に、純一郎は目を奪われた。 燃えるような赤のポニーテールに、ハーフパンツスタイルのセーラー服。 すらりと伸びたしなやかな手足に、意志の強い釣り目がちな瞳。 漫画「魔法学校の二回生ジュン」のヒロイン、"観音寺未森”の恰好(コスプレ)に違いなかった。 「ヤバ。血ィ出てるじゃんか。待ってろ」 "観音寺未森”は、腰のポーチからスマホを取り出すと、 「止血だけだから、後で病院な――レタッチ(きえろ) ……あれ?」 何やら操作を繰り返し、怪訝そうに純一郎の顔を覗き込んだ。 「お前、魔人だな?」 "観音寺未森”より、10は年上であろう女は、彼女に負けないほどの勝気な笑みを浮かべた。 「手伝ってくれよ。久しぶりのコスイベ台無しで、気ぃ立ってんだ」 「何を……」 「アキバをめちゃくちゃにしたバカを、とっちめるんだよ!」 滅茶苦茶な話だった。 この女も魔人なのだろう。 けれど、突然会ったばかりの純一郎にそんなことを持ちかける理由がない。 この状況で相手が魔人なら、むしろ惨状の犯人であることをまず疑うべきだ。 「なんで、僕が」 「だって、お前、アキバ、好きだろ?」 女は断言した。 わけがわからない。無茶苦茶だ。 けれどなぜか、純一郎の胸は高揚していた。 大好きなキャラのコスプレをしている相手に頼られたから? 命を助けられたから? それもある。 けれど。 それよりも、 純一郎にとって、大切な事を思い出したからだ。 漫画「魔法学校の二回生ジュン」で、学園都市アキバは、幾度となく危機に見舞われた。 そのたびに、主人公のジュンは、彼の幼馴染である"観音寺未森"は、逆境を覆してきた。 そんな物語に、橿原 純一郎は憧れた。 そんな物語の世界に入りたいと願い、『魔術師』のカードを受け入れた。 ならば、今、自分は何をするべきか。答えは明白だった。 そのことを、目の前の"観音寺未森"が思い出させてくれたのだ。 「わかりました――」 額から滴る血を拭い、純一郎は立ち上がる。 ――魔人能力『未森は俺の嫁』発動。 平凡な青年の輪郭が捻じれ、歪み、均整の取れた新たなる身体を形成する。 次の瞬間、純一郎の立っていた場所には、一人の少女が佇んでいた。 「お前――その姿」 「――けど、別に、アンタのために戦うんじゃないんだから! アキバのためだからね!! あたしのコスプレしてるお姉さん!」 それは、漫画のヒロインに憧れた青年が、願望のあまり、己のあり方を捻じ曲げた異能。 容姿や声のみならず、作中でヒロインが行使した武術、魔術、身体能力までも再現する。 橿原 純一郎がこの闘いに挑むにあたり獲得した、ただ一つの切り札だった。 「ハハ! 学園都市(アキバ)の守り手、"観音寺未森"が二人か!」 「"観音寺未森"はあたし一人だってば!」 「よろしくな、”未森ちゃん”。私は小山内 姫。世界一美しいアキバが大好きな女さ」 コスプレイヤーと、変身能力者。 アキバの守護者を模した偽者たちは、顔を見合わせて不敵に笑った。 5.交戦 福院・メトディオス――『法王』逆位置 炎上し、混乱の渦中にある暮夜(ぼや)の秋葉原。 その中で、福院・メトディオスは、ラウンドタイプの眼鏡をかけた。 意識のスイッチ。十字教徒から、抜け忍のそれへ。 熱を帯びる手の中のカード。 ――大アルカナ#5、『法王』。 無差別な破壊行為は、カードの持ち主による戦術だと、メトディオスは結論付ける。 迂遠ではあるが、攻撃者が戦闘に向かない魔人であれば、場を混乱させ、状況をかき乱すのはむしろ適切な策だ。 真正面から倒せないなら、相手の力を削ぎ、自分の力を最大限に活かせる場で仕留める。 忍者に近い思想である。 攻撃者の人物像を予測する。 直接攻撃には向かぬ能力者。 場を乱した後に攻撃者が考えるのは、より都合のいい条件に場を整えること。 仮に忍者の手口なら、善意の救助者を演じ、人々を誘導して都合のよい盾にする。 能力は、無機物の操作か。 精神操作系であればより効果的な煽動を行う。 直接破壊系なら被害の範囲が広すぎる。 仮説を立てる。 怪しむべきは、避難の誘導者。 人の流れに従えば行き当たる。 人混みに流されることしばし。メトディオスは見た。 歩道へ突っ込んできた車。 その先には、華奢な青年。 腰が引けて回避は間に合わない。 惨事、確定。そこを 「――リダクション(ちぢめ)!」 声が響き、車が豆粒のように縮む。 仕掛けたのは赤毛の女。 車に向けてスマートフォンを向け、彼女がこの異常を引き起こしたのだ。 意志の強い瞳。独特の、熱っぽいハスキーボイス。 間違いない。 髪型こそ違うが、彼女は、昨日ライヴで見たばかりの、小山内 姫だった。 「手伝ってくれよ」 彼女も魔人か。 おそらく、スマートフォンを媒介とした、物資干渉能力者。 掛け声から察するに、画像編集ソフトの機能と連動した制約と性能を持つ異能。 即応性に欠ける、直接戦闘には向かない能力。 彼女ほどの知名度ならば、住民の避難誘導にはうってつけだ。事実、ここまで追ってきた人の流れから、彼女が直前までそうした行動を取っていたのは間違いない。 仮説の犯人像と噛み合う。 彼女の能力なら、SNSで目撃証言のあった、タンクローリーの飛翔も説明できる。 縮小して放り投げ、元のサイズに戻す。あるいはコピーし、空中でペーストすることで実行可能だ。 手の中のアルカナが熱を帯びる。 闘争の意識に応じて、メトディオスとカードと意識が同調し、目の前の二人から、音叉が共鳴するような感覚を認識する。 ――あの二人もまた、アルカナの候補者。 ここまで状況が揃えば明白。 あの二人は、敵だ。 能力を使って忍び寄るか? 否。動きを見る限り二人は素人。 ならば、崩れた足場を裸足で行くリスクの方が大きい。 人の流れに身を委ね、少しずつ、小山内と、もう一人の青年の方へ距離を詰める。 あと少し。一足一拳の間合いまで踏み込める。 三歩、二歩、一歩。 メトディオスは、音もなく膝を抜き、滑るように地を蹴った。 戦闘の素人が反応できる動きではない。 が、 「――けど、別に、アンタのために戦うんじゃないんだから!」 青年と入れ替わるように突如現れた、赤毛のポニーテールの少女。 小山内と髪型から服装まで同じ。一回り、幼くしたような容姿。 変身能力者? いや、変わったのは、見た目だけではない。 一瞬で、場の制空権が、変容する。 青年が変身した存在――"観音寺未森"と名乗った少女は、明らかに武の心得がある。 達人の域。実戦的な使い手だ。 隙がない。反射めいた速度で、少女の右の拳がメトディオスに向けられる。 牽制? だが、拳打を繰り出すには、重心の動きが足りない。 その意味をメトディオスが思考するよりも先に。 「――爆炎呪(ヒートフィスト)!」 少女の拳から、炎が吹きあがった。 回避不能。 咄嗟にメトディオスは熱波に対して拳撃を合わせる。 本来ならば、拳一つ突き出そうと、炎を防ぐには何の意味もない。 しかし、 ――魔人能力『ヤコブの御手』発動。 福院・メトディオスに許されたただ一つの異能が、そこに明確な戦術的価値を付与する。 振り抜かれた拳を中心に、明らかに打撃の面積よりも大きな扇状の空間を風圧が薙ぐ。 それは、メトディオスを襲う炎を吹き散らした。 (損傷、顔面、右腕に熱性、丙。保持) 負傷をそう評価する。 無傷での迎撃は失敗。 直撃を避けてこの熱量。露出した皮膚のあちこちが痛みと痒みを訴え、集中力を奪う。 切り札の一つ、皮膚感覚を増強しての迎撃術、水月の業は使えないだろう。 だが、それだけ。 メトディオスは散った炎を掻い潜り、"観音寺未森"へ飛び掛かる。 左手刀。 手首から少女にいなされる。上手い。 素肌に触れれば切り裂けていたろうに、服を掴んだのは予知じみた直感か。 けれど、それだけ。 「!?」 メトディオスの左は義手。 しかも、数々の暗器を仕込んだ、素手に見せかけた凶器の塊だ。 手首からばね仕掛けの隠し刃が弾け、少女の右手の腱を奪いにかかる。 少女は左拳の軌道をメトディオスの胴から変え、爆風で仕込み刃の軌跡を逸らした。 「面白いじゃ! ないの!」 縦に、横に、空間全体を使い、二人の攻防は目まぐるしく切り替わる。 メトディオスの戦闘法は、壁や周囲の工作物を三次元的に足場とする立体的体術。 それに対し、"観音寺未森"は手から吹き出す炎で空中軌道を御することができる。 相手が地面に依存する使い手ならば大きな有利となる二人の闘法も、類似の戦術に対しては条件が互角。 おそらくは小山内 姫の支援だろう、足場になりそうな柵や街路樹が縮小されるが、メトディオスの速度には追いつかない。 やはり、彼女の能力は直接戦闘には向いていない、支援型だ。 拳から炎を繰り出す"観音寺未森"は優秀な使い手だが、いざという時にリスクを取れない判断の甘さがある。 炎が射出されるのは拳からで、関節の死角に回り込めば対応可能だ。 詰将棋のように空間を掻い潜り、拳打、蹴撃、炎を避け、受け、いなす。 (損傷、右手首、打砕、乙。保持) 何発か有効打は受け、メトディオスは生身の側の手首を砕かれた。 が、達人を仕留めるには必要な経費に過ぎない。 あと攻防四合で詰み。メトディオスは今度こそ、少女を追い詰め―― 「ばっか野郎!!」 視界が焼かれた。距離を離す。 強烈な輝きの出所は、脇で燃えていた乗用車。 「待てよ! ンなことしてる場合じゃないだろうが!」 おそらく、小山内の能力による露出光マックスの現実化。 「カード争いなら後でやってやる! まず! アキバぶっ壊してる奴を止めんだよ!」 何を白々しいことを。 言いかけたところで、メトディオスの聴覚が、飛来音を知覚した。 手裏剣や火炎瓶ではない。もっと、遥かに大きなもの。 ぼんやりした視界でその方向を見上げ―― 空中から落下してくるのは、10トン級のトラック。 それは、メトディオス、"観音寺未森"、小山内の三人を巻き込むように落下して―― 6.ヒーロー(真) 橿原 純一郎――『魔術師』正位置 結果として、落下した10トントラックが、三人の戦闘を止めた。 小山内が能力でトラックを縮め、"観音寺未森"(じゅんいちろう)が焼却、爆発させる。通行人は、メトディオスが突き飛ばして退避させた。 三人は視認する。 車が縮小された瞬間、空中へと飛び去った、箒にまたがった少女を。 「あの子!」 「接触対象限定の念動系魔人能力ですね」 全身を火傷まみれにし、右手首を折られながら、それでも突然の襲撃者は、箒にまたがった少女を追って走り出そうとする。 「あんた! 何急に襲ってきて無視!?」 純一郎の中の"観音寺未森"の人格がそれを制した。 「失礼。貴方たちが惨事の下手人かと。殺し合いは後ほど」 眼鏡にロザリオの青年は、淡々と口にした。 殺し合い、手傷を負わされた相手とは思えぬ静かな口調だった。 「手を組もう。あの子を止めたい」 「ご随意に。その隙に、私が貴方達のカードを狙わぬ理由がないことをお忘れずに」 その言葉に、純一郎はようやく、自分の『魔術師』のカードが、目の前の二人に反応していることに気付く。 この二人が、殺し合うべき、敵だったのだ。 「お前はそういうことしないよ」 身構える"観音寺未森"(じゅんいちろう)と対照的に、小山内の反応は堂々としたものだった。 「何を根拠に」 「私は、オタと十字架(それ)つけてる人は信用することにしてる。ミッション系だったんだ。幼稚園」 「なるほど」 かくて、三人は、走り出す。 「福院・メトディオス。『法王』」 「小山内 姫。『隠者』」 「……"観音寺 未森"、『魔術師』」 「カードの取り合いは」 「あの子を止めてから」 「上等!」 二人は、愛する街を守るため。 一人は、信仰に悖る惨事を見過ごさぬため。 殺し合う定めの愚者たちは手を組んだ。 ― ― ― ― 箒の少女の戦術は狡猾だった。 人々が密集する道を飛び、乗り捨てられた車を射出、ヒットアンドアウェイを繰り返す。 地面を走る小山内と、炎噴射で短距離しか飛べない"観音寺未森"(じゅんいちろう)では、空を行く少女に遅れを取る。 純一郎にとって予想外だったのが、眼鏡男、メトディオスの動きだった。 彼はビルの壁面をパルクールめいて駆けあがり、屋上から箒少女を追い始めたのだ。 あれならば、地上の混乱の影響は受けない。 であれば、純一郎がすべきは、箒少女の注意をこちらへと向けること。 「ちょっと我慢ね、姫さん」 純一郎は小山内の腰を抱く。普段の彼ならば絶対にしない行動。 だが今の彼は、"観音寺未森"だ。 「――爆炎呪(ヒートフィスト)!」 小山内を抱えていない側の手で、地面に炎を射出、その勢いで空中に飛び上がる。 地上では人込みで視界が塞がっていたが、この高さなら、小山内は見下ろす限りの自動車を、スマホに収められる。 「――リダクション(ちぢめ)!」 立て続けに、道路沿いの車が豆粒程度に小さくなる。 それは、箒少女の基本戦術の前提である弾丸が消えるということ。 箒少女の動きに迷いが生まれる。 攻撃パターンを見る限り、彼女が物を動かすには、エネルギーのチャージが必要。 対象が重いほど時間がかかるようだ。 だから、動かしやすい車輪つきのものを主に弾丸としていたのだろう。 街路樹などを使うなら、射出の頻度は明らかに減るはずだ。 (すごい! 僕も、できる! 未森みたいに! アキバを守ってる!) これが、純一郎の憧れた、ジュンと未森の見ていた世界。 高揚する。 平凡だった自分が、何者でもなかった自分が、世界の中心にいるような感覚。 自分はここにいる。何かの役に立っている。誰かのためになっている。 なんと誇らしいことだろう。胸高鳴ることだろう。 箒少女の逡巡を、ビルの屋上を行くメトディオスは見逃さない。 壁を駆け下りた加速と跳躍で少女へと手を伸ばす。 しかし、力を振り絞るように少女の箒は再加速。その左手は空を切り―― 否、メトディオスの手首から先が、射出された。 義手の手首から鎖分銅が伸び、箒の先端に絡みつく。 「っ!?」 箒少女は、きりもみ回転しながらも、メトディオスを引きずり、近くのビルの屋上へ不時着する。 やった。自分の機転が、アキバを滅茶苦茶にした犯人を、追い詰めたのだ。 純一郎は逸る気持ちを押さえながら、二人を追い、炎を射出して飛び上がった。 もし、彼が、慎重に地面を行くことを選んでいたら。 もし、彼が、小山内を置き一人で屋上に向かったなら。 それは回避できたかもしれない。 しかし、彼の愛する"観音寺未森"は直情的で、一度知り合った相手を放っておけない性格だった。 だから、その破滅は不可避であり。 「ぇ?」 思い込みが、純一郎と小山内の反応を遅らせた。 箒少女の念動は、重いものほど、時間がかかる。 だから、車より大きなものを、武器にしてくるはずがない。 そんな固定観念が、致命的な攻撃に対し、後手に回らせた。 目の前のビルが倒壊し、その瓦礫が降り注いでくる。 純一郎の片手は小山内を抱えている。手を離せば、彼女が死ぬ。 純一郎の片手は、飛行のために炎を射出している。解除すれば、落下する。 避ける? 落ちてくるものが多すぎる。 小山内の縮小は? やっている。次々と瓦礫は小さくなってくるが、拳大になっても、これだけの数が降り注げば致命傷だ。 どうする。 どうすればいい。 どうするべきだ。 "観音寺未森"なら。 いや。 ……自分が本当に憧れていた、ずっと昔に、なることを諦めてしまった、ヒーローなら。 そして、橿原 純一郎は、決断した。 ― ― ― ― 「こら、起きなさい」 意識がゆっくりと覚醒する。 草の匂いとうららかな日差しに、つい微睡んでいたようだ。 「もう。射出術式、次単位落としたらヤバいんでしょ? 付き合ったげる、来なさいよ」 幼馴染の"観音寺未森"は、なんだかんだいいつつも自分の世話を焼いてくれる。 自身を勘定に入れることが苦手で貧乏くじばかりの自分には、ありがたい存在だ。 「ありがとな、未森」 「ばっ……バッカじゃないの? どうしたのよ? 学長の料理でも食べた?」 真っ赤になる未森が微笑ましくて、青年は照れ隠しをするように大きく伸びをした。 「貸し一つ! スコッツマンのホットケーキだからね! いくわよ、ジュン」 「わかってるよ、未森」 二人は魔法学校の校舎へと連れ立っていく。 それは紛れもない、橿原 純一郎の愛した日常の世界だった。 ― ― ― 小山内は、固い床面に打ち付けられる衝撃に、目を覚ます。 彼女を抱えていた、"観音寺未森"はいない。 ビルが倒壊し、降り注ぐ瓦礫を避けきれないとみるや、少女は自らを顧みず、小山内を隣のビルの屋上へ投げ飛ばしたのだ。 小山内の手に、二枚のカードが顕現する。 一枚は、元から持っていた『隠者』。 もう一枚は、あの青年が持っていたのであろう、『魔術師』。 少女の、彼の絶命の証だった。 「ばか」 瓦礫の中に消えるその瞬間、"観音寺未森"は、あの気弱そうな青年の姿へと戻っていた。 『小山内さん。アキバを、お願いします』 そう口にした彼は、絶望でなく、誇らしく微笑んでいるように、小山内には見えた。 結局彼は、本当の名前すら教えてはくれなかったけれど。 ニセモノのヒロインではなく、本物のヒーローの姿で最期を迎えたのだと、小山内は思った。 そのあり方を、どこまでも美しいと、小山内は思った。 7.よだかの月 路田 久揺――『月』逆位置 十字架を下げた青年は、予想以上の使い手だった。 路田 久揺は、崩落したビルを見下ろして、大きく息をついた。 彼女の魔人能力は、跨ったものを飛行させる能力。 物体を飛ばすには、その重さに見合ったエネルギーの充填を必要とする。 その充填は、一度してしまえば、動かすまで一定期間物体に残留し続ける。 つまり、事前に準備さえしておけば、巨大なビルであっても、すぐに動か(とば)せる状態にはできるのだ。 とはいえ、準備できたのはこのビル一つ。 タンクローリーの衝突で躯体を脆くし、ビルを少し捩じってやることで崩落させる。 敵対するカードの持ち主を集め、この崩壊に巻き込むのが、久揺の切り札だった。 三人の中で最も危険そうであった炎使いは巻き込んだ。 だが、目の前にはこうして、十字架の青年が追いすがっている。 適当な建物の上で、久揺は青年へと向き直る。戦いは、ここで決着となるだろう。 「だから、今日、秋葉原には、来て欲しくなかったんです」 「甘(やさし)いですね」 青年は、久揺が昨日言葉を交わした相手であることに気付いているようだった。 ただの少女がここまでの惨事を引き起こした事実に驚く様子がないのは、鈍感だからか。 それとも、人ならば誰しも、こうなりうることを知っているからか。 能力の連続使用で、久揺の疲労は限界だった。 それでも、問わずにはいられなかった。 「憎くないんですか。妹さんを助けなかった世界が」 僅かに、青年の表情が強張った。 けれど、それだけ。 昨日、あれほどしどろもどろに話しかけてきたのとは、別人のようだった。 カードの反応が昨日と変わらなければ、同一人物とは思えなかっただろう。 「妹を殺したのは世界じゃない。私です」 「世界がもっと優しければ。生きていられたかもしれないのに?」 「そうかもしれません。けれど。私が選択を誤ったことに、違いはない」 久揺には、青年の思考が理解できなかった。 始まりは、同じはずだ。 大切な人を失って、苦しんだ。 この人は、自分と同じ表情で、空虚を抱えていた。そう見えたのに。 「私は、世界を許さない」 「私は、私を許しません」 「なら――」 ああ、結局。 マリ姉のいない世界で、自分を理解できる者など、いなかった。 もしかしたら、と思ったのに。 似ているからこそ、真逆であると、わかってしまった。 「――ええ」 久揺は箒の柄の先端を引き抜いた。その先には、一振りの刃。 いざという時の護身用にと用意した仕込み刀だ。 相手の能力は不明。 けれど、小山内たちとの攻防を見ている限り、近接戦闘を主体としている。 鎖や刃物を仕込んだ義手を使うのは、魔人能力だけで相手を制圧できないからだ。 おまけに、全身に火傷を負い、右手首は折れ、先ほどのビルの倒壊で幾つもの瓦礫を体に受けている。久揺だったら、既に身動きが取れない重傷だ。 対する久揺もまた、能力の連続使用と過度の集中、多くの死を目の当たりにしたことで、精神的な負荷は限界だ。 もう飛翔で逃げることも困難。これ以上時間をかければ、警察とこの青年、双方の追手から、疲労の中で逃げ続けねばならなくなる。 刃を突き出し、箒にまたがる。騎乗槍の突撃めいた刺突の態勢。 亜音速の攻撃だ、並の相手ならば、予測していても対応は不可能だろう。 だが、相手は「並」ではない。 手負いでありながら、内腿に仕込んだダーツ射出の不意打ちも完璧に防がれた。 それでも、退けない。 路田 久揺は、あの約束を、果たさないと。 加速。飛翔。 意識もまた速度を増しコマ送りで世界を知覚する。 いくら速度があれど直進は対応される。 おそらく相手の目論みはこちらの速度を利用したカウンター。 ならばそれを誘い、隙を貫く。 距離が詰まる。 5m。4m。3m。 予測するように十字架青年の腕が動き始める。速い。だが予測済み。 2m。久揺の箒の切先がぶれ、直角に曲がる。 肩から下げていたポーチから、無数のカードがバラまかれる。 ――さて、今日は何して遊びましょうか。私はUNOを持ってきました。 あの日の思い出が、UNOのカードが、二人の視界を埋め尽くす。 斬。 青年の左腕が振るわれる。 腕から隠し刃が飛び出し、空を斬る。 追いかけるような弧を描き、青年の腕から生えた鎖分銅が頭上から落ちてくる。 けれど、遅い。 ほんの紙一重。髪の毛数本分の差で、久揺は分銅を潜り抜け、青年を貫ける―― ――がつん。 その勝利の確信を。 脳を揺らす衝撃が、打ち砕いた。 なんで。 分銅はまだ、振り下ろされ切っていない。頭に触れていない。 なのに。その衝撃だけが、分銅よりも先に、久揺の頭を直撃したというのか。 久揺の刃の切先がぶれる。 手ごたえあり。だが、浅い。これでは致命傷にならない。 脳が揺れる。世界がぶれる。霞む。 路田 久揺はもう戦えない。 敗北。そうだ。敗北だ。 やられる? 血を流して倒れ、冷たくなる? それはいい。 けれど、許せないことがある。 それは、「地面に横たわる」ということ。 久揺は叫んだ。もう飛翔する精神力は残されていない。ならば、生命を燃やせ。 肺を震わせ、血で滲む視界の中、仕込み刀を手放し、箒一本で、垂直に飛んだ。 久揺は飛び続けた。 意識が途切れそうになっても、体中から力が抜けようとしても、命の灯が吹き消えそうでも。それでも、地面に落ちるわけにはいかなかった。 マリ姉のいない地面(せかい)。 マリ姉を救わなかった地面(せかい)。 マリ姉を弔わなかった地面(せかい)。 わかっていた。彼女が、世界滅亡なんて、望んでいないことは。 けれど、彼女を縛る運命のはじまりが「世界を守る」ことだから。 それに抗うには、彼女が自由意志を主張するには、この言葉しかなかっただけ。 けれど、それでも、久揺は彼女の最期の意志を、人並の反抗心を守りたかった。 復讐できないのならば、せめてそこから遠ざかろうと、垂直に少女は飛翔する。 あの日、マリ姉と飛んだように。 マリ姉と、月を目指したように。 ――魔人能力『魔女の影は月に映る(フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン)』発動。 その能力名に、路田 久揺は祈りを込める。 どうか。私を、月に連れて行って。 私を。マリ姉を。この世界に許されなかった二人を。 どこまでも、遠くへ――。 ― ― ― 「ねえ、久揺」 「なんですか、マリ姉」 「よだかの星って知ってる?」 「宮沢賢治ですか」 「今の私たち、あのよだかみたい」 ――よだかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。 ――もう、山焼けの火はたばこの吸殻のくらいにしか見えません。 「ねえ、久揺」 「なんですか、マリ姉」 「もっと速く。悲しいこととか、追いつかないくらい」 ――寒さにいきはむねに白く凍りました。 ――もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。 「ねえ、久揺」 「なんですか、マリ姉」 「ありがとう」 ――それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。 ――そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。 「―――」 「なんですか、マリ姉」 ――そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。 「 」 「なんですか、マリ姉――」 ――今でもまだ、燃えています。 ― ― かくて、路田 久揺は空へ墜ち、月の光へと溶け去った。 メトディオスは、手の中に生まれた『月』のカードを胸に抱き、祈りを奉げた。 ほんの少し何かが違えばそうなっていた自分の可能性を、弔うように。 8.偶像と聖者 小山内 姫――『隠者』正位置 手にした二枚のカードが疼く。 どうやら、『法王』は、『月』を落としたらしい。 ならば、同盟は終わり。 すぐに『隠者』と『魔術師』を求めて、あの辛気臭い眼鏡は、小山内 姫の下へやって来るだろう。 ならば、どうするか。 気力体力は十分。あとは、カードを賭けて、彼と戦うか。 『小山内さん。アキバを、お願いします』 名も知らぬ青年が残した言葉を、笑顔を思い出す。 「ごめんね。未森ちゃん。私の願いは決まってる」 小山内 姫は、そうして秋葉原も外れにある、雑居ビルの前に立つ。 「そのためにだったら、何を犠牲にしてもいい」 足取りも軽やかに、外階段を登り、ビルの屋上へ至る。 随分と長い一夜だった。 それも今、明けようとしている。 眼下には、朝の紫立った明かりに照らされた秋葉原の街。 雑多で、欲にまみれて、歪んでいて。 捻じれ、変わり果て、眉をひそめるものも多い。 そんな、小山内 姫にとって、世界で一番美しい場所だった。 「――小山内 姫さん」 「早かったね。さすが」 音もなく、背後には『法王』の、眼鏡男がいた。 全く接近されたことに気付かなかった。 おそらく、彼は声をかけることなく、小山内の首を刎ねることもできたのだろう。 どれほど魔人能力を応用しようと、おそらくこの男はその上を行く。 戦うこと。殺すこと。人の意識の裏をかく事に奉げてきた時間が違いすぎた。 「なあ、私を勝たせてくれないか?」 「それはできません」 「知ってた。十字架(それ)つけてる人って、偶像(アイドル)を崇拝(お)しちゃ、いけないんだろ。ミッション系だったんだ、私」 地下アイドルは、赤いポニーテールのウィッグを外した。 「秋葉原(アキバ)はさ。メートル原器なんだ」 スマホを取り出して、眼下の街並に向ける。 いたるところが燃え、崩れ、荒廃した、痛々しい姿だった。 ほんの一昨日に撮影した写真と見比べながら、小山内は自分に言い聞かせるように口にした。 「美しいってなんだ? 私は、何になりたかった? 忘れちまった時に、ここに来る。で、この街みたいになりたかったんだって思い出して、また、走り出す」 欲も、衝動も、理屈も、歴史も、革新も、躊躇いも、無謀も。 すべて飲み込んで、一部にして、あり続ける、秋葉原というの街のあり方。 「だからね。こうするしかないんだ。『世界で一番美しく』なんて、基準が消えちゃあ、意味がないだろ」 能力の触媒に手をかけても、『法王』の男――福院・メトディオスは、警戒することはなかった。 その甘さに小山内は微笑んで、スマホを――世界を美しく歪める万能の鏡を、構えた。 魔人能力『S.N.O.W』発動。 「――アンドゥー(もどれ)」 雪のような輝きが、秋葉原の街に降り注ぐ。 世界が、描き変わっていく。 崩れた建物が再生し、陥没した道路が復元し、鉄クズと化した車が修復し、 ――そして。 それらの中にいた人々までが、息を吹き替えし、目を覚ます。 世界の歪曲が、小山内 姫の魔人能力の本質だ。 コピー&ペーストによる復元など、消耗が激しくてとてもできたものではない。 それは、間違いではない。 死者の蘇生。因果の遡行。 明らかに、一人の魔人が行使できる能力を逸脱している。 それでも、小山内 姫の能力は、その象徴である光の雪は、街を包み込む。 『月』の照らし出した、世界の不善を嘲笑う(Scorn No-good Of World)ように。 彼女の命と――一時的に宿した『隠者』と『魔術師』――この街を愛する二人の候補者の思念で満たされた、カードの力を代償として。 ここに不可能の法則をこそ、小山内 姫は「歪曲」する。 「あー。やっぱ、秋葉原(アキバ)は、こうじゃないとな」 雪が消え、全てを元の光景へと回帰させ。 そして、小山内 姫は、能力の過負荷により、この街を見下ろしたまま、絶命した。 ― 「あなたは、偶像(アイドル)じゃない」 カードに選ばれた者の終焉。小山内の亡骸は光となり、秋葉原の朝に溶けていく。 彼女の結末に、福院・メトディオスは背を向ける。 そのあり方が、彼には美(まぶ)しすぎたのだ。 「そのあり方を、人は聖者というのです」 9.咎人は十字架を抱く 福院・メトディオス――『法王』逆位置 「天にましますわれらの父よ――」 うら寂れた雑居ビルの地下、空き物件を買い取り改装した隠れ家。 福院・メトディオスが下忍頭時代、拠点の一つとして使っていたもの。 里の追手にも割れていない、数少ないセーフエリアの一つであった。 メトディオスはその一角に、簡易的なチャペルを作り、日々、祈りを捧げている。 先日まで通っていた教会は追手に突き止められ、奇襲を受けた。 もう足を運ぶことはできない。 「みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ――」 傍らに置かれた眼鏡は、彼の心を覆う鎧。 それを外した今の彼は、抜け忍ではなく、一人の道を違えた信仰者だ。 闘いの間、目を背けていた精神の傷から、膿のような悔悟が溢れ出す。 両の手でロザリオを握り、祈りの文句を唱える。 人を殺め、愚者の証たるカードを手にした身に、この祈りは祝福をもたらすことはないだろう。 それでも、それを棄てられずにいるのが、メトディオスの愚かしさであった。 「我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、我らの罪をも赦したまえ」 違う。 自分は許されるべきではない。 人より多くの罪を重ね、またこれからも多くの咎を負うことになるだろう。 もはや自分の体同然となった義手の鎖分銅が、魔人能力『ヤコブの御手』によって拡張したエネルギーによって、少女を打ち据えた感触を思い出す。 詐術と幻惑、矛盾と欺瞞に塗り固められた生き方しか出来ない、愚かな存在。 「我らをこころみにあわせず、悪より救いだしたまえ。国と力と栄えとは、限りなくなんじのものなればなり」 願いという誘惑に手を伸ばし、悪に堕ちた男は、裁かれるべき咎人である。 「アーメン」 それでも、最早立ち止まることはできない。 既に、自分の願いをつなぐために、三つの命を吸って浅ましく生き延びてしまったのだから。 まるで賭博中毒者だ。 支払った代償に見合うものを手にするまで、男はこの愚行を止められない。 手の中には、4枚のカード。 『法王』。はじまりの一枚。 『魔術師』。炎の拳と瞳を宿した、英雄の輝きを持つ少女。あるいは青年。 『月』。男と似た喪失を味わい、男と異なる魔道を歩んだ少女。 『隠者』。数多の絶望を抱えこみ、希望の礎となった聖者。 それぞれに譲れぬ願いがあっただろう。 それを蹂躙し、自らの願いを通した。 男は地獄を歩き続ける義務がある。 これは、そういう愚かしい道行きだ。 故に、愚者の旅路(アルカナジャーニー)という。 「―—主よ(my God,)」 願わくは、彼ら彼女らが、正しく主の御許に辿りつかんことを。 男は、胸元の十字架を強く握りしめ、自らが蹂躙した三人の愚者に思いを馳せた。
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装着/刃物 魔法固定ダメージ+2(火) 攻撃する際の判定は1d魔適/2。 防御/受け流し使用不可。 張り柄巻きと唾が黒く、それ以外は夕日のような橙色を誇る日本刀だ。 縦に振ると刃に火が宿る、灯にもできるだろう。 刃こぼれが起きている為、物理的な攻撃は全く期待できない。
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逢魔が時に逢いましょう ◆EAUCq9p8Q. 【from:SUPER_Kitakami_sama@ 件名:Re.掲示板の件について 本文:あなたが誰かはわからないので、名前だけ名乗らせていただきます。 私はエノシマといいます。きらりさんと同じ高校に通っていた者です】 携帯端末の液晶面を覗きながら、輿水幸子はそのカワイイ眉間に皺を寄せた。 エノシマと名乗る少女のメール。 きらりと同じ高校に通っている、ということはこの世界でできた知り合いだろうか。 少しだけ残念に思った心を、頭を振って否定する。 「戦争なんだから、知り合いが居ないに越したことはないじゃないですか!」 再び星輝子と白坂小梅の顔が脳裏をよぎる。 小梅は無事だろうか。 被害者は出ていないんだから無事にきまっているが、連絡の一つでも欲しいものだ。 あれ以降携帯端末に着信はない。 焦る心を深呼吸で無理やり落ち着かせようとして、勢い余ってむせてしまう。 駄目だ。今のは少し間抜けだ。 こほんこほんと二回咳払いをして、周囲が誰も見てなかったことを確認して、すぐにカワイイ輿水幸子に戻る。 そして、再び携帯端末に視線を落とす。 話を聞いておく必要がある。 幸子は中学生なので、高校で起こった事件の深い事情までは探れない。 だが、きらりと同じ高校、同じ学年なら深い事情を知っている可能性がある。 それに、きらりと同じ学校に通っているというのなら、連絡網みたいな形できらりの連絡先を知っているかもしれない。 ☆ 幾つかの情報交換を済ませた。 相手の名前と学年を聞き、きらりとの関係を尋ねた。 名前は『エノシマジュンコ』、学年は高等学校の三年生(確かきらりと同学年だ)。 きらりとは友人とは言えないまでも顔見知りであり、聖杯戦争が始まる前にそれとなく良くしてもらっていたという。 確かに学校で不審な事件が起きたが、それでもきらりの性格を知る『エノシマ』には到底信じられなかったらしい。 それで、筆を執ったとのことだ。 『エノシマ』の語るきらりは、幸子の知っているきらりと相違ない。 ということは、本当にきらりの知り合いで、きらりの身を心から案じているのだろう。 やはり、クリエイターの言っていることは間違っている。 世の中には、聖杯戦争に巻き込まれても友人の安否を気づかえる人間がいる。 それだけで、幸子はなんだか嬉しくなった。 相手に一方的に聞いているだけでは悪いと思ったので幸子側の情報も渡した。 自身の情報全部を渡すのは流石にカワイイ幸子のプライバシーに関わるので、名前や、自身の学年や、きらりを探しているということを伝えた。 少しでもきらりにたどり着く手がかりになればと思ったが、相手の反応は幸子の予想を超えるものだった。 【from:SUPER_Kitakami_sama@ 件名:Re.Re.Re.Re.掲示板の件について 本文:私は今から高校できらりさんの自宅について聞いて回るつもりです。 今すぐに、というわけにはいけませんが、今日の放課後には家の場所を調べて向かおうと思っているんです】 確かに、高校にいるなら高校に通っていたきらりの情報は格段に手に入れやすい。 家の場所がわかれば探す手間は確実に省ける。 すぐに同行を申し出た。出会ってすぐで不躾かもしれないが、なりふりかまってはいられない。 少しでもはやくきらりの無実の証明をし、カワイイボクが味方なんだと駆け付けなければ。 返事は了承。 ほっと胸をなでおろす。 放課後ということなのでとまだ時間はあるが、それでもこれが実ればほぼ高確率できらりの元に近づける。 【from:SUPER_Kitakami_sama@ 件名:Re.Re.Re.Re.Re.Re.Re.Re.掲示板の件につ 本文:それでは、放課後1800に待ち合わせということでお願いします。 集合場所はC-3かD-4にするつもりです。】 幸子がお礼を述べ、『エノシマ』はそれにお礼を返し。そこで二人のメールのやりとりは終わった。 ☆ 放課後までまだ時間はある。 だが、その間をなんもなしでぶらぶらと過ごすのは時間の無駄だ。 出来ることならできるだけ早くきらりに会いたい。 商店街で起きた事件のことも気になる。 そしてなにより、幸子の目標は『犠牲のない形での聖杯戦争の終結』なのだ。 一安心で一拍置いて、気合を入れなおして一歩を踏み出す。 向かう先は、商店街のずっと向こう。別の区域だ。 幸子がその情報を手に入れたのは、商店街の事件について聞いて回っている時だった。 商店街の店の人が、とても重要なことを教えてくれたのだ。 「うーん、その時間は起きてなかったけど……あ、でも。あの人なら知ってるかも」 狐の面を頭につけた少年NPCが、幸子の質問にそう答えた。 「あの人って?」 「なまえは しんない。いっちゃあ あいつは てーへん さ。ちかよると くさいぞ」 奥に居たうさ耳の少女NPCが狐面NPCの言葉を補足する。 二人の話によると、深夜から早朝にかけて商店街を徘徊するNPCがいるとのことだ。 そしてそのNPCが今朝、しかも戦闘の最中に居たのは確定らしい。 「宇佐美ちゃん、知ってたの?」 「あさはやくから うるさかった。 あいえー! にんじゃー!」 要約すると、朝方にそのNPCが悲鳴をあげているのを聞いた、ということだ。 つまり、その人物に聞けば事件のあらましを知ることが可能なのだろう。 二人から事件を見ていたと思われるNPCの容姿を聞く。 壮年の男性らしい。 目立つ容姿ではないし、容姿も曖昧な情報しか知らないので会って情報交換ができるかと言われれば、たぶん無理だろう。 ただ、商店街にきらりが居ないのは歩きまわってほぼ確定しているし、商店街で聞きまわっても事件のことがわからないのはもうさんざん思い知った。 場所を移すには絶好の機会かもしれない。 居ないと思われる場所を何度も探すより、別の場所を探したほうがきっと効率は良い。 「……確か、あっちの方って言ってましたよね」 向かう方向は狐面のNPCが教えてくれた『目撃者NPCがいつも向かっていた』方角。 『エノシマ』との約束や、輝子の思いやりのこともあるのであまりC-2から離れることはない。 せいぜいエリアひとつ分くらいだ。 商店街を抜け、大きな通りを右に曲がる。 日は高い。 18時まであと9時間以上ある。 それまでに、なにか手がかりが見つかればいいのだけれど。 「考えていてもはじまりませんね」 振り返らずに進んでいく。 歩調は、いつもの幸子から考えればとても早い。 ずんずん、ずんずんと進んでいく。 その間もすれ違うNPCの顔を見るのは怠らない。 きらり、目撃者NPC。どちらでもいい。偶然でもどちらかに会えれば上出来だ。 ずんずん進み。NPCの顔をしげしげ眺め。またずんずん進み。 そうしているうちにすぐに商店街のゲートは見えなくなった。 歩いていると始業の鐘が遠くから聞こえてくる。 ふと立ち止まり、音の方を向く。 学校は今から授業だ。輝子や小梅は学校で勉強に専念することだろう。 今日の授業のノートは取れないから、今度誰かにノートを貸してもらわなければならない。 そういえば、仕事以外で学校をサボるのは幸子にとって初めての体験だ。 まるで不良になったみたいだ、と少し場違いな感想を抱く。 少しだけドキドキとか、ハラハラとかしながらも、幸子はまた早足で歩き始めた。 幸子が商店街を去ったのは、ちょうど彼女が身を案じていた白坂小梅が商店街に来るより少し前のことだった。 【C-2/商店街周辺/1日目 午前】 【輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]健康、怒り、恐怖(微) [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]なし [所持金]中学生のお小遣い程度+5000円分の電子マネー [思考・状況] 基本行動方針:この聖杯戦争をカワイイボク達で止めてみせる 1.諸星きらりに会う。 2.商店街で起こった事件が気になる。 3.きらりの捜索+事件を見ていたというNPCの捜索を兼ねて別の地区へ。 4.何かあったら輝子の家に避難……? 5.放課後18:00に『エノシマ』と会う。場所はC-3もしくはD-4の予定。 [備考] ※商店街での戦闘痕を確認しました。戦闘を見ていたとされるNPCの人となりを聞きました。 ※小梅と輝子に電話を入れました。 ※『エノシマ』(大井)とメールで会う約束をしました。 また、小梅と輝子に「安否の確認」「今日は少し体調がすぐれないので学校を休む」「きらりを見かけたら教えて欲しい」というメールを送りました。 ☆ 『輿水幸子』。 聞いたことがある名前だと思うが、どこで聞いただろうか。 大井が集められる人名情報は極端に少ない。 学校を除けばほとんど他者との交流がないから当然といえば当然だが。 そんな大井の意識に残っているということは、かなり状況は限定される。 一応クラス内の学友の名前くらいならそらで言えるようになったが、その中には『輿水幸子』は居ない。 ならばどこで聞いたものか、と顎に左手を添えて考える。 そうして思い至った。 そうだ、そういえば。 街を歩いていた時か、近所のスーパーで買物をしていた時にそんな名前を耳にしたような気がする。 有線放送だったか、テレビの試聴用番組だったか。そこは確かじゃない。 だが、そこで話していた少女が確かそう名乗っていたはずだ、『輿水幸子』と。 記憶を辿ってみる。独特な名前だから聞き間違いはないだろう。 そこまで考えて、職員室前から来客口に向かっていた足を止める。 そういった方面に疎い大井でも名前を知っているということは、『輿水幸子』はこの聖杯戦争の舞台ではかなりの有名人と考えたほうがいい。 そして、今回のメールの相手も身バレを防ぐために有名人の名前を使った、と考えるのがスマートな考え方だ。 そもそも本名を会ってもいない相手に普通に明かすなんて危機管理がなっていなさすぎる。 大井の鉄壁のカモフラージュがあるとはいえすぐに個人情報を晒すのは、今が戦争中という自覚がないか、戦争を舐め腐っているか。 もしくは『エノシマ』の名を騙った大井のように「バレても問題のない名前」を使っているか、だ。 成程、一筋縄ではいきそうにない。 だが、その程度の謀り事、大井の作戦の前では無意味だ。 偽名を使っていようと、こちらに興味を持って接触を図ってきたというのは事実だ。 そこが間違いなく事実であるならば、大井としては及第点だ。 興味があるということは、方針を提示すればなんらかのリアクションを見せるということにほかならない。 この食いつき具合からすれば、集合場所に対して確実に注意を払う。 指定の時間に本人が近くにいるかどうかはともかくとして、確実に『参加者が現れるかもしれない』として方針に組み込むだろう。 集合場所を襲撃してくるにせよ、遠くから観察に徹するにせよ、情報戦で優位に立てている現状ならば大井が更に動きやすくなる。 もし、彼女が仮に本物の輿水幸子もしくは偽名だが諸星きらりの本当の友人で、のこのこ現れてくれたならそれこそ好都合。 一人が食いついた。この事実が大切なのだ。 この一人を逃さないために手を打つ必要がある。有り体に言えば、彼女を釣りだす餌が必要になる。 集合場所に人が居なければ『輿水幸子』は騙されたと思うだろう。そうすれば攻撃にしろ交渉にしろ行動を起こさなくなる。 それは困る。だから集合場所には誰か、彼女を釣りだす餌として人間が居る必要がある。 当然、大井自身が餌になるつもりはない。 しばし少考して、そして天からの啓示のように一つの妙案に思い至った。 (アーチャー) 『なにかな』 (デコイを一人用意して欲しいんです) 『それは……君の代わり件のメールの集合場所に向かう人物、ということか』 (理解が速くて助かります。『エノシマ』が居るなら彼女がいいんでしょうが、推定参加者だから接触は避けるべきだと思うんです。 だから、まあ適当に、それっぽいのをお願いします。相手に容姿情報は与えてないのでどんな子でも構いません) NPCに大井のふりをさせ、集合場所に送り込む。 集合場所で『輿水幸子』が偽大井を見たら、何か反応を起こす。 本当に諸星きらりの友人だというなら情報交換を望んで釣り出せる。そこを討つ。 もしこちらを利用しようとしていたなら、確実に偽大井は殺される。 だがその攻撃から相手のサーヴァントの位置を特定して、必要に応じて戦闘形態+宝具解放したアーチャーに向かわせればいい。 素晴らしい作戦じゃないか。 先の先まで見据えて、未然の事態にまで警戒を怠らず対策を打てている。 あの脳みそが弾薬か鉄鋼かで出来ている長門に今の大井の半分でも作戦立案能力があれば、北上はおそらく……いや、確実に死にはしなかっただろう。 この程度の事もできずに威張り散らしていた軍の奴らを鼻で笑う。 通りすがりの生徒が不審そうにこっちを見たが、この程度ならルーチンの範囲内だ。問題はない。 鼻で笑い、すぐに思考を切り替える。 いつまでもあの愚図どものことを考えていても時間の無駄だ。 来客口にお客様を待たせているんだから、早いうちに対応しなければならない。 だが、こちらについてももう策は思い浮かんでいる。 少々不安要素が残るが、相手の容姿はもうばっちり記憶した。仮に今逃がしても問題ない。 靴を上靴からローファーに履き替え、つま先で地面を打って履き心地を整える。 『輿水幸子』とやりとりをしながら校内をぐるっと一周。『諸星きらりについて数人に聞いてきた』くらいの時間は経っただろう。 かつかつというタイルを叩く音が、ことことというアスファルトを叩く音に変わる。 あの目立つ見た目の少女はちゃんと待っていた。日光から逃げるように木陰で座り込んでいる。 時間を確認する。予鈴まではもう少しといったところか。 今度のやりとりは数十秒で十分だ。最新の注意を払いながら手早く済ませよう。 ☆ 「申し訳ありません。諸星さんについて、心当たりの先生方に聞いてみたんですが誰に聞いても教えてもらえなくて……」 「そっか」 「ただ、知人に当たってみたら『諸星さんらしき人の帰宅の方向なら分かる』と」 「へえ」 「生憎、私もその子もこれから授業なので案内することはできないんですが……」 「ああ、いいよいいよ。そこまで無理言うつもりはないから」 金髪の少女はへらへらと笑いながら手を振ってみせる。ぷらぷらと宙を舞う手のひらはまるでもみじの葉のように小さかった。 そしてそのあとで、少女は少しだけ寂しそうな顔をする。 本当に『気にしていない』し『情報が手に入らなかったのが残念』という素振りだ。 こちらに対して一切警戒していない、と捉えていいだろう。 この様子ならいける、と確信を持って次の手を切り出す。 このタイミングならば、相手も引っかかってくれるだろう。 「あの、放課後で良ければ……」 「ん?」 「放課後なら、その子も用事がないと思うので、私から案内をお願いすることも出来ると思います。 といっても家そのものが分かるわけではないので、手助け程度にしかならないと思いますが」 暗鬱、といった感じだった少女の顔がぱっと輝く。華やかな笑顔だ。嬉しさを満面で表現している。 食いついた。 ここまで分かりやすいと思わず笑いそうになってしまう。 輿水幸子は面と向かえないので探り探りだったが、面と向かったこの少女ならば安全策に出る必要はない。 ガッツポーズは心の中で。表面は一切変えずに話を続ける。 「どうでしょう」 「そだね。だったらお願いしようかな」 「じゃあ、何か、情報を交換できるようにしておいた方がいいかもしれませんね」 「じゃ、番号交換しとこうか」 そう言うと、少女はおもむろに携帯端末を取り出した。 番号交換。知識はある。携帯端末同士の固有番号を交換して一対一で通話が出来るというものだ。(実際に試したことはない) いざという時のために、番号は手帳にメモしてある。電話番号の探し方が分からず慌てて相手に隙を見せるような真似はしない。 ページをちぎって渡すと、少女はなれた手つきで携帯端末を操作した。 ついで、電子音が鳴り響く。液晶画面には11桁の数字の羅列が映っていた。 「なにかあったらさ、ここに電話ちょうだいよ。じゃあ、外も暑いしもう帰るから」 「はい。確かに……あ、それと」 そのまま立ち去ろうとしていた少女を呼び止め、もう一つ餌を巻いておく。 「方角的には、あっちの方……それに、あまり離れてないって話だったので。どうしても早く会いたいなら」 指を刺したのは遊園地の方。当然デタラメだ。諸星きらりの家なんて知らないし、知りたくもない。 場所を指定したのはこの少女を出来るだけアーチャーの監視下においておきたいから+この周囲に足止めさせて作戦に取り込みやすくするためだ。 近所をうろうろと探しまわってくれていれば、こちらから呼び出しやすい。 そういった本心は伏せ、ただ『諸星きらりがいるかもしれない』という情報だけを与えておく。 これはあくまでオマケにすぎない。正直、襲撃を放課後と定めた時点でいらぬ作戦だ。 本作戦の方に引っかかってくれてるのだからここまでやる必要なんて本当はない。 だが、念には念を入れて。動かせる駒は手元に残しておく。 大井はトラック島に戦力の大半を集中させた挙句鎮守府襲撃を受けて壊滅状態に陥った馬鹿どもとは違うのだ。 少女は朗らかな笑みで手を振って去っていった。 少女の影が見えなくなるのを確認して、大井も振り返り、校舎に戻る。 所要時間は二分弱といったところ。 見立てよりは少し長引いてしまったが、それでも朝礼までは時間がある。 大井は達成感を胸に、来客口を後にした。 【D-2/高等学校/1日目 午前】 【大井@艦隊これくしょん(アニメ版)】 [状態]満腹、健康 [令呪]残り三画 [装備]北上の枕の蕎麦殻入りお守り [道具]通学鞄、勉強道具、スマートフォン [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:北上さんへの愛を胸に戦う。 0.聖杯戦争に北上さんが居る可能性を潰す。 1.諸星きらりとエノシマという女子高生、各種噂を警戒。 2.メールを送ってきた人物をC-3もしくはD-4に集める。そのためにアーチャーに集合場所に赴く偽大井を用意させる。 3.作戦開始直前になれば偽大井を使って2.の場所に少女(双葉杏)も上手いこと誘導する。 4.メールの件が片付いたらしばらくはNPCとして潜伏する。 [備考] ※双葉杏を確認しました(電話番号交換済)。また、輿水幸子の名前を確認しました。ただ、偽名を疑っています。 ※北上が参加者として参加している可能性も限りなく低いがあり得ると考えています。北上からと判断できるメールが来なければしばらくは払拭されるでしょう。 ※『チェーンソー男』『火吹き男』『高校の殺人事件』『小学校の死亡事件』の噂を入手しました。 また、高校の事件がらみで諸星きらりの人相・性格、『エノシマ』という少女が諸星きらりを探っていたことを教師経由で知りました。 ※フェイト・テスタロッサの顔と名前を把握しました。 ☆ 「はあ、疲れた」 笑顔は疲れる。 しかも営業スマイルならなおのことだ。 双葉杏は引きつりそうな頬を撫でながら、朝来た道を今度は逆方向に歩いていた。 『一発でいい人に出会えたにゃー! オレっちも万引きなんかしなくて良かったニャン!』 ランサーが本当に嬉しそうな声色で念話を飛ばす。 実体化していたなら小躍りくらいはしていたかもしれない。 少々頼りない自身のサーヴァントと、気を張り詰めていた気苦労からため息を一つこぼしそうになり、自分の置かれている状況を理解して飲み込んだ。 (ランサー) 『で、どうするニャン? 今から早速探してみちゃうのかニャ?』 (あれ嘘だよ、たぶん) 『……』 うまく騙せているといいが、と思いながらぼちぼちと歩いて行く。 杏はあの栗毛の少女に対する疑心を一切解いていない。 怪しいと思った瞬間から、彼女は杏を罠にかけようとしているものだとして対応している。 それでも、あの場で逃げ出さなかったのは、相手が戦争でいう敵だとするなら『何も言わずに逃げればサーヴァントを送ってくる可能性がある』と考えたからだ。 そうなると困る。 顔がばれてしまっている以上探されれば見つかるのは必至だし、そうなってしまえば先頭は避けられない。ランサーはイマイチあてにならないので出来ることなら戦闘は避けたい。 それに、下手に動けば今度は杏のことが掲示板に書き込まれてきらりの二の舞いになってしまうかもしれない。 それだけは避けなければならない。 見ず知らずの誰かに付け狙われることになるなんて考えただけでも身震いする。ニートは安心と安全がないと生きていけないのだ。 見つかってしまった以上なんとかして相手に怪しまれずに去らなければならない。 相手の警戒を緩めて自由になるには、『相手の策にまんまとハマった』と見せるしかなかった。 杏だってアイドルだ。その気になれば外面よく振る舞うことは出来る。 普段の杏からは考えられないほどに感情豊かに振る舞ってみせると、栗毛の少女は特になにをするでもなく解放してくれた。 だが、杏の側はまだ警戒をとかない。 あの栗毛の少女のサーヴァントが見張っている可能性は十分にある。不審な動きは最小限に抑えていく。 表情一つ、動作一つ、怪しまれないように考えながら。 ため息一つ気楽につけない現状にため息をつきそうになったが、やっぱり飲み込んでおいた。 ぼちぼち歩いていると高校前の並木道を抜け、道路に出た。 タクシーは来た時に返してあるのでもう居ない。新しいのを捕まえるか、歩くか。 そこは悩むまでもない。すぐに携帯端末を取り出して、朝電話を掛けたタクシー業者の番号を探す。 視界に先ほど連絡を入れた栗毛の少女の電話番号が目に入る。その場で確認したから偽物ということはないだろう。 電話番号を渡すことを「悩みはしなかった。 電話番号程度なら掲示板で晒されても問題ない。電話番号を悪用しても痛くはないし、電話口で得られる情報なんて少ないし、マナーモードか電源をオフにしていれば音をたどって杏にたどり着くなんてこともできない。 自由か、電話番号か、天秤にかければ自由のほうが大事。当たり前の話だ。 タクシー業者に電話をかけると、周回の車が一台近くにいるらしいとの返事がもらえた。 このけだるい日光の下にいつまでも居なくていい、というのはありがたいことだ。 木陰に入って座り込むと、泡を食ったようなランサーの声が聞こえてきた。 『て、て、てことは、つまり、オレっち、結局学校に侵入しなきゃなんないってことかニャン!? あんまりだにゃ #65374;!! そんなインポッシブルなミッションやらされるなんて聞いてないにゃ!』 (ああ、それももういいよ) 『ほ、ほんとかニャン!? あとで嘘っていっても……』 (いいよ。ランサーだって死にたくないでしょ) 『……オレっち、もう死んでるニャン……』 (そっか。そうだっけ。ごめんごめん) 高校に侵入させて個人情報を得る、という考えはあの少女の登場で瓦解した。 校内で情報を探るには時間の長短はあれど確実に実体化が必要になるだろう。 だが高校で実体化すればあの少女、もしくは他の主従のサーヴァントに見つかる可能性が極めて高い。 再三言っているが、ランサーはあんまり頼りにならない。 戦場に巻き込まれて冷静な立ち回りが期待できるようなキャラをしていないし、三騎士で呼ばれているのに地力がそもそも低すぎる。 あえて藪をつついて蛇を出すことはない。 ただ、そうなると問題が一つ。 『じゃあどうするニャン? きらりって子の家の方向が嘘で、調べにいかなくていいってなると……』 (……そこだよなぁ) きらりの唯一の情報源である高校が使えない。 そうなると、この状況で取れる方法はかなり限られてくる。 あの少女のリークがこちらの信用を得るためにある程度真実を伝えているものだと仮定してこの近所を調べるか。 それとも完全に振り出しに戻るか。 あるいは。 木陰に座ったまま視線を動かす。 小中高等学校の密集したこの地域にはもう一つの重要な施設があった。 詳しい道筋は思い出せないが、そこなら確実に諸星きらりの情報を持っている人物がいる。 図書館。 今朝確認した通達で、ルーラーが『フェイト・テスタロッサ』の受け渡し場所に選んだ施設。 それだけ危険ではあろうが、ルーラーならば(通達をきらりに渡すという作業があるため)きらりに関する情報は確実にあると断言できる。 まあ、きらりが参加者だったとするなら、だが。 しかし裁定者であるルーラーが個人情報をそのまま渡してくれるとは思えない。突き返されるか、無理難題をふっかけられるか。 他に楽な道があればいいのだが、悲しいことに今の杏には思い浮かばない。 灰色と白のタクシーが近づいてきて、方向指示器を杏の方に向ける。 音も立てずに止まった車は、また音も立てずに後部座席のドアを開けた。 杏は、太陽の光で力を失ったゾンビのようにのろのろとした足取りでタクシーに乗り込み、クーラーが効いていて他者の目も届かない車内でようやく一息ついた。 「どちらまで?」 扉が閉まり、タクシーが走りだす。 どの道を選んでも、めんどくさいだろうなぁと思いながら杏はとりあえずの向かい先を告げた。 【D-2/タクシー車内/1日目 午前】 【双葉杏@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]健康、焦燥感 [令呪]残り三画 [装備] [道具]携帯ゲーム機×2、大井の電話番号 [所持金]高校生にしては大金持ち [思考・状況] 基本行動方針:なるべく聖杯戦争とは関わりたくなかったが 0.諸星きらりに会う。 1.きらりの家はDラインの地区にあるらしいが……? 2.栗毛の少女(大井)を警戒。 3.Dラインの地区を探すか、無為に動くか、図書館か、他の何かか。どうするかなぁ…… [備考] ※大井と出会いました。大井を危険人物(≒きらりスレの 1)ではないかと疑っています。 ※大井からきらりの家の方角情報(偽)を受け取りました。こちらも疑っています。 【ランサー(ジバニャン)@妖怪ウォッチ】 [状態]健康 [装備]のろい札 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:なんとなく頑張る 1.双葉杏に付いて行く ☆ 推定マスターとされている金髪の少女が門前から消えたのを確認する。 千里眼のような視力補佐スキルを持っていないため、金髪の少女の行方をどこまでも追いかけることは不可能だ。 だからただ、来客口前の並木道を通って乗ったタクシーの向かうだいたいの方向を確認するだけしかできない。 それでいい。 今はまだ、それで十分だ。 アーチャー・我望光明は特に少女を警戒することなく、自身のマスターである少女・大井の方に意識をずらした。 作戦にところどころ穴は見られるが、それでも『勝ち残ってやる』という強い意志を感じる。 ひとえに彼女が出会いたいと言っていた少女『北上』のためだろうと思うと、アーチャーは苦笑した。 大井自身に対人戦の経験や作戦の立案の経験がないのは確認済みだ。 だというのに、最適とはいえないまでも、及第点が得られる程度の作戦を立案し、自ら実行し、不測の事態にも柔軟に対応している。 一人の少女は、狂おしいほどの愛を抱いて戦況に一石を投じようとしている。 そして、そのために知恵を振り絞り敵を誘い出し討とうとしている。 『心』とは。 『絆』とは。 人をかくも狂わせ、さらなるステージへと導く。 『絆』。 下らない幻想だ。そう切り捨てていた。 だが、それが時として強靭な力を生み出すことを、アーチャーは忘れてはいない。 ―――だから今日……天高はアンタの支配から卒業する!!――― ―――青春銀河、大・大・大、ドリルキックだ!!―――― ―――卒業生代表、仮面ライダーフォーゼ……如月弦太朗――― 心と心の繋がりなんて曖昧なもので。 少女は。 少年は。 若者たちは。 自身の限界を軽く飛び越え、不可能を可能にする。 超新星よりも強く激しい光を放ち、栄光の未来へ向かって一歩を踏み出し、彼らの銀河に足跡を残していく。 「素晴らしいじゃないか。私は少々、君を見誤っていたかもしれないよ」 想像以上だ。 呼び出した少女が戦闘能力を持たないと分かった時は、アーチャーの方から積極的に動かなければならないことを想定していた。 だが、これならもう少しは大井に任せていてもいいかもしれない。 大井が望めばその力を振るうし、大井の要請があれば多少の無理も通してみせよう。 少なくとも、戦況が大井の手に負えなくなるまでは、彼女の良き臣下として働こう。 そう。少なくとも、戦況が大井の手に負えなくなるまでは。 「しかし、そう考えると、非常に残念だ。 君に戦う心だけではなく、戦う力があれば……よりよい関係を築けたのだろうがね」 もし、彼女が強い意志だけでなく、その意志を肯定するだけの力を持っていれば。 戦闘能力でもいいし、優れた知力でもいい。潜在的な魔力でも、あっと言わせる奇術でも、なんでも構わない。戦況に一石を投じられる『戦う力』を持っていれば。 アーチャーはもっと大井に歩み寄り、精力的に仕えただろう。 だが、彼女にはそれがない。あるのは人一倍に強い自尊心と、狂気的な愛という名の『絆』だけだ。 だから当然、アーチャーは大井に懐を見せない。 「……君は、どの程度持ってくれるのかな」 大井が動けばそれだけ多くの参加者が動く。 今の大井の作戦が彼女の目にはどう映っているかは分からないが、駆け引きに秀でた者や対人ゲリラ戦に慣れている者にはすぐに裏をかかれるだろう。 そうなればいつかしっぺ返しが来る。 しっぺ返しがアーチャーの手で握りつぶせる程度ならば問題ないが、それを超えれば一切の容赦はない。 その時は大井を切り捨て、別のマスターを探す。 彼女の忠実な臣下を演じながら、どこかの誰かのサーヴァントを殺し、ついでに大井も始末して別のマスターと再契約をする。 別のマスターが手に負えない状態になれば、またいつか切り捨てて。 仮にもし、戦う力を持つマスターが居れば、大井との関係はそれまでだ。 確かにアーチャーは『絆』に負けた。だが、『絆』の強さが無敵だとは思わない。 裸に『絆』で戦場を駆けるマスターよりは、武装し強い『意志』を持つマスターのほうがいいに決まっている。 相棒は強いほうがいい。それも傍目でも分かるくらいに強いほうが。 その時は、大井をそそのかしてでもそのマスターと交戦し、敵のサーヴァントを屠った上で大井も始末しよう。 無論、再契約は両者の合意が必要なので『再契約が執り行えない』という危険が伴うのでおいそれとは行えない。 願いを持つ者達の戦争なので夢半ばで倒れることを選ぶものは居ないとは思うが、最悪は想定しておくべきだ。 マスターの乗り換えは、出来ることなら避けたい。 大井がこの調子で聖杯戦争を最後の一人まで駆け抜けるというのならば、それが一番楽でいい。 「だから……今だけは、信じているよ。『絆』の強さというやつを」 心にもない言葉で取り繕う。 彼女がアーチャーとともに聖杯を掴む相棒なのか。それとも今一時限りの偽りの相棒なのか。 今はアーチャー自身にも分からない。 ただ、はっきりとしていることは一つ。 アーチャー・我望光明。 彼の赤い瞳が映すものは、いつだって宇宙の果てに輝く夢だけだった。 【D-2/高等学校の屋上/1日目 午前】 【アーチャー(我望光明)@仮面ライダーフォーゼ】 [状態]実体化 [装備]サジタリウスのゾディアーツスイッチ [道具]理事長時代のスーツ姿 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を得る 1.大井との距離を保ちつつ索敵。双葉杏の監視。 2.フェイト・テスタロッサが現れた場合、大井に連絡を入れる。 3.大井の代わりに集合場所に向かうNPCを調達。方法はスキル『催眠術』による一時催眠。 4.放課後、集合場所に現れる『輿水幸子』他参加者の偵察。必要とあればアーチャー直々に手を下す。 5.戦闘力に秀でたマスターが居れば大井を切り捨てることも思案。 [備考] ※双葉杏=マスターであるとしています。諸星きらりと江ノ島盾子は見てない可能性が高いです。 双葉杏のタクシーの進行方向は知っていますが具体的にどこに向かったかまでは知りません。 ※アサシン(クロメ)と近い位置に居ますが存在に気付いていません。(菓子の咀嚼音も距離のこともあり届いていません) ただ、アサシンが不用意に近づいたり、臨戦態勢に入ったりすれば気配遮断の効果が切れて気づきます。 ※大井に対する意識は可寄りですが、彼女の戦闘能力には不満があります。 もっと力の強い参加者が居、その参加者が望むのであれば大井を屠っての再契約も視野にいれてあります。 BACK NEXT 019 情報交換 投下順 021 いつか見たグラジオラス 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 014 絶望少女育成計画Reflect 大井&アーチャー(我望光明) 023 シュガー・ラッシュ 双葉杏&ランサー(ジバニャン) 022 マッド・ティーパーティー 輿水幸子